研究課題/領域番号 |
21H04408
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
二井 仁美 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (50221974)
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研究分担者 |
片桐 正敏 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00549503)
石原 剛志 静岡大学, 教育学部, 教授 (10340043)
家村 昭矩 名寄市立大学, 保健福祉学部, 特任教授 (10412876)
長瀬 正子 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (20442296)
竹原 幸太 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30550876)
坂本 紀子 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40374748)
阿久津 美紀 目白大学, 人間学部, 助教 (50823449)
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60322210)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 教護院 / 社会的自立 / 留岡清男 / 奥田三郎 / 家庭学校 / 児童自立支援施設 / 感化院 / 少年教護院 |
研究実績の概要 |
北海道家庭学校では、校長留岡清男の指示により、創立50周年事業として、同校理事で精神科医奥田三郎が「卒業生のゆくえ」調査を実施した。同調査は、1914年に家庭学校社名淵分校として開校以来、1964年3月末日までに動向を卒業した905名の卒業生中、「改善卒業者」670名の内、満19歳に達しない者と卒業後3年を経過していない者を除いた510名を分析対象とした。同様の調査が1954年の創立40周年においても実施されている。これらの調査は、北海道家庭学校(家庭学校社名淵分校)に30年以上勤務した職員の全面的な協力によってなされた。本研究では同調査の対象か否かを問わず、創立以来の卒業生について同校職員が収集し保存した記録について、北海道家庭学校と元法務省職員の協力によりその特徴を把握した。具体的には、奥田は、卒業時の進路調整に関する連絡記録、家族や就労先あるいは関係機関等からの照会や連絡に対する対応記録、職員による卒業生との面談記録や職場訪問・家庭訪問等の記録、卒業生からの電話や書簡等の受信記録、卒業生の来校記録、卒業生の状況に関する新聞記事等、多種多様な情報を保管し集積し、それらに基づいて予後調査の分析を行った。その内、1948年1月から1960年3月までの入所者の入所時平均年齢は13歳、退所時の平均年齢は15歳、在籍期間は平均2年3か月である。彼らの退所時の進路調整とアフターケアの諸相を検討すると、当該時期退所者の予後情報の収集営為そのものが、卒業後のアフターケア機能を果たしていること、予後情報の蒐集過程そのものが、職員にとってケース研究となり得たことなどがわかった。このようなアフターケアは、感化法施行期・少年教護法施行期からなされてきたインケア・リービングケアの上に成り立つ。それ故、本年度は、あわせて少年教護法施行期の少年寮、社名淵分校、済美館の様態についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、実施できなかった北海道家庭学校および東京都立萩山実務学校における史料調査を行うことができた。北海道家庭学校においては、感化法、少年教護法施行期に加えて児童福祉法施行期初期における家庭学校社名淵分校の教育の様相を検討するとともに、同校と司法関係者の協力を得て、同校における卒業生に関する社会的自立に関する情報を収集した。その結果、予後情報取得の営為自体がアフターケアに繋がっていることなど、新たな知見を得ることができた。これらの成果を含めて『北海道家庭学校100年史』の草稿を執筆し、その検討会を年間を通して開催した。あわせて、東京都立萩山実務学校が中心となって発刊された『教護』のデジタルデータを入手し、戦後の教護院に関する状況を検討するための基礎的資料を収集した。以上のことから、本年度は昨年度の遅れを取り戻しえたと捉えられる。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、北海道家庭学校、東京家庭学校、萩山実務学校等において所蔵史料の目録作成と児童福祉アーカイブズ構築作業を行うとともに、国立武蔵野学院、東京都立公文書館をはじめ全国の感化院・少年教護院・教護院関係文書所蔵機関において、資料所在調査を継続する。第二に、感化院・少年教護院・教護院における退所者の社会的自立におけるアフターケアの様態について、家庭学校社名淵分校・北海道家庭学校を事例とする検討を行う。その際、感化法施行期・少年教護法施行期(戦時下・戦後)および児童福祉法施行初期という時期においてなされてきたインケア・リービングケアの様態の解明を行い、その分析に基づく中間報告に位置づく原稿を『北海道家庭学校100年史』に掲載する。第三に、児童福祉アーカイブズ、雑誌『児童保護』『教護』『ひとむれ』等の検討を通して、感化院・少年教護院・教護院出身者の社会的自立に対するサポートの制度とその様態を整理する。第四に、毎月1回程度の史料調査とともに、隔月1回程度の研究会(内、全体研究会3回)を開催し、研究の進捗状況について検討する。研究会においては、養護施設、里親委託等、教護院以外の社会的養育との関係についても検討する。
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