研究課題/領域番号 |
21H04426
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北岡 明佳 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (70234234)
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研究分担者 |
新井 仁之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10175953)
辻村 誠一 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (10381154)
蘆田 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (20293847)
渡辺 英治 基礎生物学研究所, 神経生理学研究室, 准教授 (30250252)
櫻井 研三 東北学院大学, 人間科学部, 教授 (40183818)
村上 郁也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60396166)
栗木 一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80282838)
小池 千恵子 立命館大学, 薬学部, 教授 (80342723)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 錯視 / AI / 色の錯視 / マクスウェルのスポット / 黄斑 |
研究実績の概要 |
AIの一部が特定の色の恒常性錯視(例えば、本来赤いものだが色変換によって画素が灰色になったものを赤と知覚すること)を人間と同じように見ることができることがわかった。さらに、それは特定の画像の学習によらないことも判明したことから、AIを用いた錯視研究のアプローチの注目度が高まっている。このAIも色の錯視が見えることについて、錯視の種類によって困難度に違いがあることがわかった。比較的易しいと思われるのは、加算的色変換による色の恒常性錯視であり、いくつかのAIが人間と同じように判定した。一方、並置混色変換によるものは、今のところAIは人間と同じように判定できないようである(ノイズが多いなどいろいろ言い訳をするか、まったく見当はずれな推測をする)。この知見について今後検討する。 錯視はどちらかというと視覚系の中では高次なものと考えられる。一方、本年度は人間の網膜の黄斑を知覚的に容易に可視化する錯視の技術を開発した(マクスウェルのスポット錯視)。黄斑は青色光を吸収するということは知られていたが、これまで容易に可視化できなかった理由は、液晶ディスプレーの青色の波長が黄斑の吸収のピーク(460nm)からずれていたためであった。有機ELディスプレーは青色のピークが黄斑の吸収のピークと一致する。これに特定の刺激配置を組み合わせることで、容易に黄斑の位置と形状が可視化できることを示し、複数の学会・研究会で報告した。この新技術を用いて、眼科における医学的応用と、マウスを用いた網膜研究への応用を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のタイトルは「AIの導入による総合的錯視的研究の新展開」である。大きく分けてテーマは2つあり、「AIと錯視」の関係を明らかにすることと、錯視の総合的研究(実験心理学的研究、動物実験的研究、数理科学的研究)を行うことである。前者に関しては、既にAIによって特定の錯視の知覚が生成されるという知見を論文公表済みであるが、広範囲の錯視についてはAIで説明できるというところには至っていない。むしろ容易に説明できないことから、AIによって錯視を全般的に説明できるわけではないという可能性が高まりつつある。現時点ではこの点を見極められないことから、研究は進展しているが、大いに進展しているとは言えないという評価が妥当である。一方、錯視の総合的研究としては、新しい錯視の発見が続いており(マクスウェルのスポット錯視他)、大いに進展している。総合して、本研究はおおむね順調に進捗していると評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
AIと錯視の関係の研究については、引き続き試行錯誤を繰り返して検討する。錯視と言っても機能的な視知覚の副産物であることが多いことがわかってきており、「錯視は『誤った学習』による視知覚ではないか」という問いの延長線上にAIの導入があったわけであるが、その問い自体の再考が必要である可能性を含めて、慎重に見極めたい。 今後の錯視の総合的研究としては、マクスウェルのスポット錯視とハイディンガーのブラシ(黄斑による偏光の知覚)の関係の研究、並置混色による色の知覚、特にオストワルト表色系的並置混色の発展、極座標系パターンおよび運動の知覚とその数理の研究の深化を重点的に行う。
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