研究課題/領域番号 |
21H04427
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北川 智利 立命館大学, BKC社系研究機構, 教授 (60336500)
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研究分担者 |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60332524)
和田 有史 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (30366546)
西浦 敬信 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70343275)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 聴覚 / 身体性 / 注意 / 感情 / 社会的応用 |
研究実績の概要 |
本年度は、聴覚の空間的注意における身体性についての予備的検討、聴覚の身体性が感情と意思決定に対して与える影響についての実験環境の構築、および聴覚の身体性の特殊詐欺場面への応用における研究を進めた。 聴覚の空間的注意の距離方向における空間窓形状を測定すべく,予備的な検討として,probe-signal法を用いて標的音の反応時間を計測した。実験の結果,身体からの距離によって標的音の反応時間に若干の違いが見られた。ただし,距離に関する明確な傾向は見られなかったこともあり,次年度以降継続して検討する事とした。 感情と意思決定に対する聴覚の身体性の影響については、立命館大学に防音室を設置し、音響機材をセットアップした。その環境で音響計測を行い、聴覚の身体性に関する実験環境を構築した。本年度はCOVID-19の影響で被験者実験は実施できなかったが、次年度以降に聴取実験を行う環境がある程度整った。 実験室実験が難しかったこともあり、聴覚の身体性の社会的応用に力を入れた。特殊詐欺場面において耳元で聴く声が、騙されやすさに影響する可能性について幅広く発信した。島根県警察と協力して特殊詐欺被害を低減するための防犯教室の体験型教材を作成し、島根県全域で防犯教室を実施した。アンケート調査の結果、防犯教室に参加することで「自分も詐欺の被害に遭うかもしれない」という意識が高まることが分かった。また、一般的に「退屈でつまらない」と評価されがちな警察による防犯教室が「楽しい」ものだと感じられることもわかり、体験型教材の有効性も示された。家電メーカーの受話器のない電話機の開発にも協力した。新聞の取材を受けたり、一般向けの講演を行うことで、音の身体性を利用することで特殊詐欺被害を低減できる可能性について発信をおこなった。これらの活動が評価され島根県警察本部長からの感謝状を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響を受け,対面でおこなう必要がある実験の遂行に支障が出た.そのため,一部の検証にはやや遅れが出た.一方で,本年度は社会的応用に力を入れることで、聴覚の身体性を特殊詐欺の被害低減に役立てる可能性を示すことができた。対面実験が難しかった期間に社会的応用に力を入れることで、概ね期待通りの成果を得られている.
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響を受けずに対面実験が可能になったため、今後は積極的に対面実験を行う。音の身体性が、注意、感情、意思決定に及ぼす影響について実験的な検討を進めていく。社会的応用場面についても、特殊詐欺場面以外に応用可能なフィールドについて調査を進めていく。
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備考 |
高知新聞、「過信と錯覚に落とし穴.還付金詐欺で識者に聞く」, 2022年5月16日、山陰中央新報, 「スピーカー通じ話すことも有効 心理学専門家が講演 特殊詐欺被害防止」, 2021年10月20日、読売新聞, 地方版, 「防犯意識の向上必須」, 2021年9月21日、秋田魁新報, 「特殊詐欺を許さない 研究者の目1ー3」, 2021年5月3-5日
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