研究課題/領域番号 |
21H04450
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺嶋 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30176911)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | アクアプロセス / プラズマプロセス / 複合材料 / タフコンポジット |
研究実績の概要 |
初年度にあたる2021年度は、無機フィラー粒子として、高い熱伝導度を誇る窒化ボロン(BN)、グラーフェンなどを用いた、高い熱伝導性と強靭性を有した、高熱伝導性フレキシブル複合材料の開発を進め主に以下のような成果を収めた。 ①プロセス開発・診断: コロイド系液中プラズマプロセスやキャビテーションバブル援用プラズマプロセスを用いた、無機フィラー粒子の表面処理を行い、それをフィラーとして用いたタフ複合材料(コンポジット)の創製に取り組んだ。特に、従来よりも低い包接する率で自由空間が大きい低包接率ポリロタキサンを母材として用いた複合材料の創製に成功した。また、プラズマ内部プロセスパラメータの把握のため、プラズマ反応場の診断に取り組み、各種のプロセスプラズマの電子密度や温度などのプラズマ分光診断測定を行った。 ②表面処理を施した無機フィラー材料の評価: プラズマ表面処理後の無機フィラー粒子は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)やX線光電分光分析(XPS)などにより結合状態を、X線回折(XRD)、原子間力顕微鏡(AFM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)などを用いた構造観察を行った。特に、電子スピン共鳴(ESR)測定によるプラズマ処理による欠陥生成の精緻な解析に成功するとともに、ゼーター電位測定によるプラズマ処理の効果を解析し、複合材料内でのフィラーの分散性との相関を明らかにし、物性制御パラメーターとしての有効性を見出した。 ③タフ複合材料(コンポジット)の構造と物性の評価: X線トモグラフィー法(X-CT)や走査電子顕微鏡(SEM)観察、により構造・組織評価を行い、力学測定(引張試験、破壊靭性測定)、プロセスとの相関を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にあたる本年度は、従来の研究の深化(包接率を変えた母材高分子の利用やゼーター電位測定、ESR測定によるプラズマ処理による構造解析とその制御など)と共に、新たな実験に向けた実験システムの整備(レーザー誘起プラズマアクア合成に向けたシステムの整備など)、新しい実験手法(アコーステイックエミッション測定、その場SEM観察による破壊過程の動的測定法)の初期の試行実験が進むなど順調な進展を収めた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は初年度の研究成果を踏まえ、引き続き無機フィラー粒子として、高い熱伝導度を誇る窒化ボロン(BN)、グラーフェンなどを用いた、高い熱伝導性と強靭性を有した、高熱伝導性フレキシブル複合材料の開発を以下のような方策で進める。 ①プロセス開発・診断: コロイド系液中プラズマプロセスやキャビテーションバブル援用プラズマプロセスに加え、レーザー誘起アクアプラズマを用いた、無機フィラー粒子の表面処理を行い、それをフィラーとして用いたタフ複合材料(コンポジット)の創製に取り組む。特に、低い包接率で自由空間が大きい低包接率ポリロタキサンを母材として用いた複合材料の創製を進める。また、プラズマ内部プロセスパラメータの把握のためのプラズマ反応場の診断に取り組み、各種のプロセスプラズマの電子密度や温度などのプラズマ分光診断測定も引き続き進める。 ②表面処理を施した無機フィラー材料の評価: プラズマ表面処理後の無機フィラー粒子は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)やX線光電分光分析(XPS)などにより結合状態を、X線回折(XRD)、原子間力顕微鏡(AFM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)などを用いた構造観察を進める。また、引き続き、電子スピン共鳴(ESR)測定による欠陥解析、ゼーター電位測定も重点的に進める ③タフ複合材料(コンポジット)の構造と物性の評価: X線トモグラフィー法(X-CT)や走査電子顕微鏡(SEM)観察、により構造・組織評価を行い、力学測定(引張試験、破壊靭性測定)、プロセスとの相関を明らかにする、また、破壊過程のアコーステイックエミッション測定、その場SEM観察による破壊過程の動的測定も本格的に進める。
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