研究課題
放電プラズマによる抗腫瘍作用などのプラズマと生体との相互作用に関する新奇現象においては,「プラズマの生体作用機構は何か」が最重要の学術的問いである.プラズマ中では高速電子が分子と衝突してフリーラジカルを生成する.このラジカルが起点となり,逐次連鎖反応により次々と別のラジカルが生じ,それらの作用で細胞内化学反応(代謝)に変動が生じていると考えられる.本研究は「プラズマ生成ラジカルが誘起する逐次連鎖反応はどのように進んでいるか?」に焦点を絞り,プラズマが溶液内に生成したラジカルを起点とする逐次連鎖反応で生じる複数の『プラズマ誘起活性種』の検出・解析することを始めている.液相ラジカルの反応は有機分子の合成・修飾・分解,Ⅰ)官能基の置換,Ⅱ)C3(炭素原子が三つの化合物)からC4, C5への付加,Ⅲ)C2,C1への分解,に大別される.これらの液相ラジカルの反応は,非熱的に連鎖してラジカル発生する特徴を有する.非平衡に進む化学反応が故に,反応その場で定量的に解析される計測科学が重要である.液相ラジカルの反応を,溶液内の物資の拡散や流れを考慮して,時間と空間を区分し,低温大気圧プラズマでは,10の15乗程度の高いプラズマ密度の環境で発生する有機分子について液相ラジカルの反応の理解を通して進められた.
2: おおむね順調に進展している
ラジカルの検出手法を構築するため,電子スピン共鳴法による液相ラジカルの反応を解析する準備を行った.イメージング用のユニットを使って,静的な系でのラジカル空間分布を4mm×4mmの領域で調べ,溶液中の液相のラジカル反応系を解析を行った.
今後,液相活性種の時空間分析について二次元ESR手法を活用して実施し,液相中ラジカルの挙動を解明していく.液相ラジカルが関与する素反応については,量子化学計算も活用し,分子内水素結合や遷移状態の解析を行う.スパコン利用(名大不老システム)により計算科学アプローチを加速して実施する計画としている.
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 19件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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