研究課題/領域番号 |
21H04461
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 貴之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10375595)
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研究分担者 |
森口 哲朗 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10635890)
山口 由高 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 技師 (40415328)
洲嵜 ふみ 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (70779727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 蓄積リング / 多価イオン / 半径 / 寿命 |
研究実績の概要 |
陽子/中性子比が極めて異なるエキゾチック原子核の構造進化は、量子多体系としての原子核構造そのものの興味のみならず、中性子星などの極限下の宇宙元素合成における素過程を左右するホットな話題である。本研究は、蓄積リングを用いて、通常のビームライン実験では不可能な、新しい実験方法論を確立する。具体的には、電子を纏わないエキゾチック核を蓄積リングに貯蔵し、変形共存として知られる長寿命励起状態の質量と寿命を飛行中に観測する。同時に、この識別された励起状態を直接ビームとして使用し断面積測定することで、基底状態と励起状態の半径を独立に決定する。 2022年度はコロナ禍にも関わらず、QST-HIMACにて断面積測定のビームタイムを4回、検出器テストのビームタイムを3回、消化することができた。理研の蓄積リングは効率向上を目指してキッカー電磁石の改良を行っている。放電に強いキャパシタンスを導入し、動作確認した。関連して、キッカー位置にて分散整合を確認するためのプラスチックシンチレータ位置検出器を完成させた。HIMAC加速器のビーム(Kr 200MeV/u)を用いてPPACと同レベルの位置分解能~1mmを得た。実機の製作も完了しており2023年秋にはインストール予定である。また、飛行時間と全エネルギー測定用にGAGG(Ce)結晶シンチレータを使ったコンパクトな検出器を開発した。時間分解能<50ps, エネルギー分解能1%(FHHM)を達成した。この検出器を蓄積リング内に導入することでさらに効率を向上できる。 HIMACにおける断面積測定のPilot実験は、80Kr, 84Kr, 86Krに対して荷電変化断面積のエネルギー依存性を500MeV/uまで測定完了した。断面積を1%の精度で決定することができた。断面積については装置、方法論とも準備完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍であったがQST-HIMACにてビームタイムを多数こなし、理研蓄積リング用の2種類の検出器を完成させた。さらにKr同位体の荷電変化断面積のエネルギー依存性の測定も完了した。Pilot実験として十分な精度を得ることができ、断面積測定の準備は整った。理研の蓄積リングはキッカー電磁石の改善修理が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は理研蓄積リングのキッカー電磁石の改善修理を行なった。キャパシタンスを交換することにより動作試験で改善が確認できたので2023年度中に作業を終える。その間、平行してQST-HIMACにて完成させたプラスチック位置検出器をキッカー位置に導入する。また、入射ラインに新規導入したPPAC群のDAQシステムの確立と動作試験を進める。これらの改善によって、入射ビームの軌道を正確に抑え、測定効率の向上につながると考えている。 また、2022年度も休止していたショットキー検出器を蓄積リングに導入する。我々が以前開発した小型高感度型である。オフライン試験は完了している。さらに、GSI研究所と協力して、周回軌道に感度がある新型ショットキー検出器の開発を進めている。現在ドイツ側で製作中であるが完成後、2023年度内に理研に輸送し動作試験を行う予定である。2台のショットキー検出器が新規に導入されるため、DAQの整備が重要である。 HIMACを用いたKr同位体の断面積測定は完了した。Krビームの荷電変化断面積のエネルギー依存性を1%の誤差で精密測定することに成功した。理研で測定する際のビームエネルギーについて貴重な知見を得た。断面積のエネルギー依存性を確実にするために2023年度はHIMACで得られるTiビームに対し、より高エネルギービームを使った断面積測定へ発展させる。100~700MeV/uの測定を予定している。 実験準備が整いつつあるので、課題採択委員会に実験プロポーザルを申請する予定である。
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