研究課題/領域番号 |
21H04465
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 隆司 東京工業大学, 理学院, 教授 (50272456)
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研究分担者 |
近藤 洋介 東京工業大学, 理学院, 助教 (00455346)
緒方 一介 九州大学, 理学研究院, 教授 (50346764)
王 赫 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70733963)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 実験核物理 / 不安定核 / 近接核子対 / 短距離相関 |
研究実績の概要 |
本研究は、不安定核における近接核子相関(SRC: Short-Range Correlation)の世界初観測を目指すものである。核内のSRCは、平均核子間距離の半分未満に近接した陽子ー中性子対で、フェルミ運動量を超える過大な運動量をもち、原子核の従来の平均場的一粒子軌道描像では説明できない現象として注目されている。最近、SRCの中性子過剰依存性が電子散乱実験で示唆されたが、その発現機構はわかっていない。一方、不安定核における一粒子軌道専有率の実験値と殻模型の予想がずれ、その発現機構が未解決となっているが、SRCが一つの候補となっている。本研究では、不安定核(中性子過剰核)の重陽子ノックアウト反応を逆運動学で行うという世界初の手法の導入によって、SRCの中性子過剰依存性を実験的に明らかにする。実験では、得られる後方散乱、前方散乱の微分散乱断面積の測定から、陽子中性子対の短距離相関を調べる。歪曲波インパルス近似理論計算と比較し、断面積の増大度合いを詳細に調べる。後方散乱の増大度合いがSRCのシグナルとなる。 R4年度の実績は以下のとおりである。理化学研究所RIBFにおいて、R4年度後半(R5年1月)にビームタイムがスケジュールされ、中性子過剰核10Beに対して(p,pd)反応実験を行う予定で準備を進めた。それに向けて、実験で使用する前方散乱検出器、後方散乱検出器の製作を進め、宇宙線やガンマ線源を用いた性能テストを行った。このように実験に向けて準備を進めたが、加速器の不具合が発生したことに伴い実験は延期となった。 理論面では、スケジュールされていた実験が延期となったため、本格的なデータ解析は次年度以降になると判断し、本年度は、前年度の成果を学術論文として出版することに注力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理化学研究所RIBFにおける不安定核10Be(p,pd)反応実験がR4年度後半にスケジュールされ、それに向けて、前方散乱検出機、後方散乱検出器の準備を順調に進めた。しかし、加速器の故障によって延期を余儀なくされた。本実験を目指して修士論文研究を1名まとめることができたが、本実験ができなかったために修士論文の内容が上記検出器のオフラインでのテストに限られた。一方で、陽子-中性子対ノックアウト反応を記述する新しい反応模型「離散化チャネルインパルス近似(CDCCIA)」の骨格部分を学術論文として公表した。 以上より、外部要因ではあるものの加速器実験の実施が延期され、研究の進行が遅れたことは否めないことからやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
理研RIBFにおける10Be(p,pd)実験に向け、検出器の性能評価をより緻密に行い、本実験の成功を確固たるものにする。そのため、阪大RCNPにおいて後方散乱検出器および前方散乱検出器の性能評価実験を行う 理論面では、当初、今年度に実施を予定していたCDCCIAの改良を進めるとともに、これまで用いてきた標準的な微分断面積に代わる、逆運動学にとって最適な微分断面積の検討と提案を行う。
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