研究課題/領域番号 |
21H04466
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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研究分担者 |
山下 雅樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (10504574)
風間 慎吾 名古屋大学, 高等研究院(素粒子), 特任助教 (40736592)
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50313044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / 液体キセノン / TPC検出器 / アクシオン / 非加速器素粒子実験 |
研究実績の概要 |
本年度は密閉型液体キセノンTPC検出器の設計・開発とその運用のためのテストベンチ整備に着手した。冷凍機、真空容器、真空ポンプ・真空配管系、流量コントローラーなどの主要物品の整備を行うと共に、石英容器の容器内側・外側を独立に液体キセノンを循環できる2相式TPC検出器の概念設計とキセノンガス・液配管のデザインを行い、容器内外層独立にキセノン液化が可能な熱交換器を考案し製作を行なった。密閉型TPCの中核部である石英フランジ容器について、石英フランジ部に導電薄膜コーティング電極を形成し、陽極・陰極・遮蔽電極の代替とするアイデアに基づき、候補となる物質や検出器内壁やワイヤー電極に使用する部材について、真空紫外光に対する光電量子効率の測定を行うテストベンチを立ち上げ、キセノンランプを仮の真空紫外光源として測定を開始した。 一方、XENONnT実験については、コロナ禍で旅行が制限する、イタリア・グランサッソー現地に残ったメンバーの努力により検出器の組立を完了し、液体キセノンを導入して試運転と検出器較正を完了し、物理解析に用いる最初データセットSR0の取得を行なった。液体キセノン中の不純物の低減に成功し、要求値の10倍の電子ドリフト長を達成した。一方、下部スクリーン電極と陰極との短絡が発生し、予定の1/5の大きさのドリフト電圧で運転することになり、原子核反跳・電子反跳弁別能力の低下を余儀なくされたが、内部ラドン背景事象を大きく削減していたため、結果として解析に重大な支障は起こらなかった。これらSR0データを用いた暗黒物質探索の解析を進めるとともに、前身実験のXENON1T実験の解析を進め、論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により対面での研究活動が著しく制限され、特に実験装置の組み立て作業など人手が必要な作業は進まなかった。定期の研究打ち合わせもオンラインのみであり、ブレンストーム的な議論を行うには効率が下がった。また、業者もコロナ対応で人手が不足し、機器の調達に時間がかかり、連絡すら滞るケースもあった。海外渡航も全く不可能な状態であり、イタリア・グランサッソーでの検出器組立作業にはほとんど参加できず、その後の国際共同研究もTV会議による議論にとどまり研究効率は低下することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
XENONnTでの電子散乱事象の解析については、太陽ppニュートリノ初検出に向けた解析の取りまとめ作業に入る。同時に、検出器中のラドン源や孤立電子背景事象の理解に向けて、リアルタイムデータクォリティプロセスを導入し、取得データの速やかな評価と原因究明を行う。将来のDARWIN実験に向けた密閉型液体キセノンTPCの開発研究については、同様の密閉型TPCの開発を行っているフライブルグ大との連携を検討しながら、開発研究を加速させる。問題となるのがコロナ禍での研究アクティビティの活性化であるが、コロナ渦中は少人数で可能な準備を進行させつつ、集合制限や移動制限が解除され次第、対面での実験作業や、海外現地へ渡航し、対面会議への積極な参加を行うなどして、アクティビティを速やかに復活させ、研究を加速させる。コロナ禍において設計、調達を進めてきた液体キセノンテストベンチの各要素の組み立て作業を一気に行い稼働させる。また、定例の打ち合わせは、海外とのオンライン会議はそのままに、学内の会議はできる限り対面会議とし、議論を活性化させる。
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