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2023 年度 実績報告書

レーザーによるコヒーレントな原子核操作の実現ー原子核時計の創成と応用に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 21H04473
研究機関岡山大学

研究代表者

吉村 浩司  岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (50272464)

研究分担者 北尾 真司  京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (00314295)
菊永 英寿  東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (00435645)
重河 優大  国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員 (60845626)
笠松 良崇  大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (70435593)
山口 敦史  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70724805)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2025-03-31
キーワード原子核時計 / トリウム / レーザーによる原子核操作 / 真空紫外レーザー分光 / 物理定数の時間変化
研究実績の概要

本研究では、以下のような研究項目に対して、段階的かつ相互に連携しながら研究をすすめることにより、レーザーによるコヒーレントな原子核操作を実現し、研究目的の達成を目指す。以下にそれぞれの研究内容について本年度の研究成果を述べる。
【アイソマー準位からの真空紫外光遷移の観測】 新たにウィーン工科大学が開発したトリウム229の濃度を高めた結晶を用い,X線モノクロメータをより高精度なものに変えることにより探索感度を向上させることで、アイソマー準位からの真空紫外光の観測に成功した。X線のエネルギーを核共鳴散乱の共鳴エネルギー付近で変化させたところ,共鳴エネルギー付近でX線で観測したものと同様の真空紫外光の明瞭なピークを観測した。複数のバンドパスフィルターを用いて波長を選別し、真空紫外光の波長を0.4 nmの精度で決定し、アイソマー状態の半減期を高精度で測定することに成功した。
【X線ビーム照射によるクエンチ現象の発見】 X線の照射時間を変化させながら、真空紫外光の強度の変化を調べたところ、X線を照射することによってアイソマー状態が通常の寿命よりも速く崩壊する現象(クエンチ現象)が観測された。現在X線がクエンチ現象を引き起こすメカニズムとその温度による影響などの詳細なスタディを行っている。
【イオントラップを用いたアイソマー準位の確認】 開発したイオントラップにトリウム229イオンをトラップしてレーザー分光することにより、アイソマー状態のイオンを選択的にとりだすことに成功した。これによりトラップしたアイソマー状態の寿命を初めて観測した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初、目的としていた真空紫外光の観測に成功し、そのエネルギーと寿命を精密に決定することができ、研究目標としていた大きなマイルストーンを達成した。また、イオントラップの実験でも、トラップされたアイソマー状態のイオンの寿命を初めて観測し、その結果をNature誌に発表した。さらに当初予期していなかったX線照射によるアイソマーのクエンチ現象を世界で初めて観測した。これにより、固体結晶中のアイソマー状態をコントロールできる可能性を示した。以上のように、各研究項目について当初の計画以上に進展している。

今後の研究の推進方策

今後は、各研究項目で得られた成果・知見をもとに、さらに連携を深めて、アイソマーからの脱励起真空紫外光のスタディ,イオントラップ実験を行っていく。
【能動的アイソマーの生成法の進化による真空紫外光の観測】 前年度に観測に成功した真空紫外光に対して,その詳細なスタディを行う。まず,X線モノクロメータをさらに高精度化すると共に、光学結晶試料を低温に冷却することにより,真空紫外光の特性(強度,時間応答)の変化をスタディする。
【アイソマーのクエンチ現象のメカニズムの解明】 前年度に初めて観測された、X線照射中のアイソマー寿命の減少(アイソマークエンチ現象)を解明する。X線照射時に結晶中に発生する現象をさまざまなプローブで捉え、クエンチ現象のメカニズムの解明を行う。
【イオントラップを用いた229Th 原子核時計基盤技術の確立】
イオントラップの高性能化を進めて、波長1088 nm,690 nm, 984 nm の半導体レーザーを用いたレーザー冷却を目 指す。
【真空紫外レーザー開発と229Th レーザー分光】アイソマーへの確実な励起を行うことが可能なパルスレーザーシステムを開発する。約10MHzの周波数幅をもつレーザーを開発し、トリウムドープ結晶、イオントラップを用いたレーザー励起を行い、アイソマー状態のさらなる詳細なスタディを行う。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 9件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] ウィーン工科大学(オーストリア)

    • 国名
      オーストリア
    • 外国機関名
      ウィーン工科大学
  • [雑誌論文] Laser spectroscopy of triply charged 229Th isomer for a nuclear clock2024

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Atsushi、Shigekawa Yudai、Haba Hiromitsu、Kikunaga Hidetoshi、Shirasaki Kenji、Wada Michiharu、Katori Hidetoshi
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 629 ページ: 62~66

    • DOI

      10.1038/s41586-024-07296-1

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Vacuum Ultraviolet Search from Thorium-229 Isomer in Crystal Toward Solid-State Nuclear Clock2023

    • 著者名/発表者名
      Takatori S. et al.,
    • 雑誌名

      Proceedings in 2023 Joint Conference of EFTF/IFCS

      巻: 2023 ページ: 1-4

    • DOI

      10.1109/EFTF/IFCS57587.2023.10272086

    • 国際共著
  • [雑誌論文] High-sensitive XANES analysis at Ce L2-edge for Ce in bauxites using transition-edge sensors: Implications for Ti-rich geological samples2023

    • 著者名/発表者名
      Li Wenshuai、et al.
    • 雑誌名

      Analytica Chimica Acta

      巻: 1240 ページ: 340755~340755

    • DOI

      10.1016/j.aca.2022.340755

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] トリウム 229 アイソマーの脱励起真空紫外光の観測2024

    • 著者名/発表者名
      吉村浩司
    • 学会等名
      第17回核共鳴散乱研究会
  • [学会発表] Production-decay dynamics of Th-229 nuclear clock isomeric state in crystal2024

    • 著者名/発表者名
      M. Guan
    • 学会等名
      The 15th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms (FPUA2024)
    • 国際学会
  • [学会発表] Characterization of Thorium-229 doped crystals using synchrotron radiation X-rays toward an understanding the Thorium-229 isomer in solids2024

    • 著者名/発表者名
      S. Takatori
    • 学会等名
      The 15th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms (FPUA2024)
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of Vacuum Ultraviolet Laser Towards Th-229 Nuclear Clock2024

    • 著者名/発表者名
      K. Shimizu
    • 学会等名
      The 15th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms (FPUA2024)
    • 国際学会
  • [学会発表] Observation of the VUV signal from the 229Th isomer in a Th doped CaF2 crystal toward realizing the nuclear clock2024

    • 著者名/発表者名
      R. Ogake
    • 学会等名
      The 15th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms (FPUA2024)
    • 国際学会
  • [学会発表] Th-229 アイソマーのレーザー励起に向けた装置開発2024

    • 著者名/発表者名
      大懸遼一郞
    • 学会等名
      日本物理学会春季大会
  • [学会発表] 放射光X線を用いたTh-229 アイソマー生成・脱励起過程の研究2024

    • 著者名/発表者名
      M. Guan
    • 学会等名
      日本物理学会春季大会
  • [学会発表] 原子核時計実現へ向けたXAFS法によるトリウム229をドープした結晶の特性評価研2023

    • 著者名/発表者名
      高取沙悠理
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] 原子核時計実現に向けたアイソマー状態トリウム229原子核からの真空紫外光観測2023

    • 著者名/発表者名
      岡井晃一
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] Vacuum Ultraviolet Search from Thorium-229 Isomer in Crystal Toward Solid-State Nuclear Clock2023

    • 著者名/発表者名
      S. Takatori
    • 学会等名
      IEEE IFCS-EFTF 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Characterization of Thorium-229 Crystal towards Vacuum Ultraviolet Search from Nuclear Clock isomer2023

    • 著者名/発表者名
      S. Takator
    • 学会等名
      6th Joint Meeting of the APS Division of Nuclear Physics and the Physical Society of Japan
    • 国際学会
  • [学会発表] The observation of the VUV signal from the isomeric state of 229 thorium nuclei toward realizing the nuclear clock2023

    • 著者名/発表者名
      K. Okai
    • 学会等名
      th Joint Meeting of the APS Division of Nuclear Physics and the Physical Society of Japan (Hawaii)
    • 国際学会
  • [学会発表] 固体中にドープされた229Thアイソマー状態からの脱励起真空紫外光の観測2023

    • 著者名/発表者名
      平木貴宏
    • 学会等名
      第12 回停止・低速RI ビームを用いた核分光研究会 (12th SSRI)
  • [学会発表] Experimental apparatus for detection of radiative decay of 229Th isomer from Th-doped CaF22023

    • 著者名/発表者名
      T. Hiraki
    • 学会等名
      International conference on hyperfine interactions and their applications 2023 (HYPERFINE 2023),
    • 国際学会
  • [学会発表] Th-229 極低アイソマー準位からの原子核核時計遷移分光研究2023

    • 著者名/発表者名
      吉見彰洋,
    • 学会等名
      大洗・アルファ合同研究会
  • [学会発表] Study of the Th-229 nuclear clock isomer using X-ray beam2023

    • 著者名/発表者名
      K. Yoshimura
    • 学会等名
      Nuclear Photonics 2023
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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