研究課題/領域番号 |
21H04475
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉岡 瑞樹 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 准教授 (20401317)
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研究分担者 |
三島 賢二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (20392136)
槇田 康博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30199658)
北口 雅暁 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (90397571)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 中性子 / ガス検出器 / 超伝導磁石 |
研究実績の概要 |
中性子は最も単純な原子核の一つであり、およそ900秒で電子、陽子、反ニュートリノに崩壊する。その崩壊寿命は素粒子標準理論およびビッグバン元素合成理論の精密検証において不可欠なパラメータであるが、測定手法間に3.8標準偏差の有意な乖離が見られている。この乖離は「中性子寿命問題」と呼ばれており、未知の現象に起因する可能性が真剣に議論されている。この問題を解決すべく、申請者らは茨城県東海村の陽子加速器施設J-PARCの大強度中性子ビームを用いて、既存の手法とは異なる測定方法により中性子寿命を高精度で決定する新しい実験を提案している。
ガス検出器に導入された中性子ビームは検出器動作ガス分子により散乱されることがある。散乱中性子が検出器部材や検出器容器に衝突すると高確率でガンマ線が発生し、このガンマ線が実験精度を悪化させる背景事象の要因となりえる。そこで、検出器内壁を中性子との反応によるガンマ線発生確率が非常に低いフッ化6 リチウム焼結体で覆うことにより、この背景事象を著しく抑制することができる。また、ガス検出器に導入された中性子ビームは、そのほとんどが検出器内で崩壊せずに素通りする。先に述べたように、中性子は物質と衝突すると背景事象を生じるガンマ線を生成するため、ビームライン最下流にフッ化6 リチウム製の中性子ビームストップを設置する必要がある。本年度はフッ化6リチウム内壁およびビームストップの設計・作製を進めた。また、荷電粒子検出面に高電圧を印加する必要があるが、これまで放電現象が見られていた。本年度は、引き続き放電箇所への対応を進めた。また、検出器が設置されている真空容器内に、検出器校正用の放射線源を設置する必要がある。本年度はエネルギー校正システムの設計・作製を進めた。以上の開発が完了したのちに、装置一式をビームラインに輸送・設置し、中性子ビーム照射試験を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガス検出器の放電対策に想定以上に時間を要したが、本年度中に対策を終え、当初の計画通り中性子ビーム照射を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、中性子ビームを用いたコミュショニングを開始している。取得データの理解を進め、中性子寿命を導出可能な物理データを取得する。
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