研究課題/領域番号 |
21H04477
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
北口 仁 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究センター, 特命研究員 (60354304)
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研究分担者 |
西島 元 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (30333884)
菅野 未知央 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 准教授 (30402960)
菊池 章弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50343877)
谷貝 剛 上智大学, 理工学部, 教授 (60361127)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 超伝導線材 / 極細金属線加工技術 / 超伝導ケーブルの電磁現象 / 極細超伝導線の特性評価技術 |
研究実績の概要 |
ビレット外径215mmの量産規模で、極細線に特化したデザインでは世界初の、熱間押出線材試作を実施した。押出加工では問題なかったが、断面観察により外皮銅とブロンズ間のNbバリアが異常変形していると判明した。原因として、ビレット組立時の隙間が大きいこと、バリアの材質に問題があると考えた。その後の伸線加工と中間焼鈍の繰り返しでバリアの異常変形は著しくなった。最終的に外径0.05mmまでの伸線加工には成功したが、バリアの異常変形は断線原因となるため改善が必要と判断した。そこで、種々の改良を加えたビレットで熱間押出試作を実施した(部材調達等の関係で翌年度へ繰越。)改良前同様に熱間押出には問題はなく、押出時の定常圧力も大きな違いは無かった。しかしながら、押出後の断面ではバリアの異常変形は認められず大きく改善された。 A15極細線を用いた19本撚線導体の特性は、導体作成時に個々の素線に加わる歪みだけでなく、冷却による熱収縮、磁場中通電時の電磁力によっても大きく影響を受けると考えられる。7本素線モデルを用い、19本試作撚線導体と同じ撚りピッチを採用して導体の電気回路モデルを構築し、節点電位法を用いて計算機シミュレーションを行った。大規模電気回路モデル計算に適した並列計算およびGPUコンピューティングが可能な環境構築を行い、並列計算ベンチマークで1桁以上の計算時間短縮を実現した。 熱処理前後の直径0.05mmのブロンズ法Nb3Sn線材の室温機械的特性を明らかにするため単繊維引張試験を行った。異なるゲージ長の試験片の荷重-変位曲線から見積もった装置変形を差し引くことで、伸び計やひずみゲージを使用できない極細線材のヤング率や破断ひずみを評価することに成功した。また、同じ線材を使用した19本撚線の引張試験も開始し、撚線を構成する線材間の応力伝達が破断強度に影響を与えることが示唆される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の想定に反し、2022年内に確保出来る予定であったプリカーサー太径線加工の請負業者における工程が2023年にずれ込み、完了が当初見込みよりも2ヶ月遅延した。このため、一部を翌年度に繰り越して遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに試作した外径0.05mmのブロンズ法Nb3Sn極細素線をもとに、数十~数千本を束ねて高次撚りした集合化ケーブルを作成する。熱処理後の可とう性を評価するとともに、液体ヘリウム中で磁場を印加して直流通電実験を実施する。従来加速器で実用されるNbTi導体では実現不可能な高磁場でキロアンペア級の大電流通電が可能であることを実証する。 また、電磁力を考慮した歪み印加による超電導特性の定式化と通電中の導体超電導特性のシミュレーションコード開発を行う。 さらに、撚線の引張試験のデータを蓄積し、撚線と素線の機械的特性を比較、議論する。素線、撚線のそれぞれについて、室温で破断強度以下の引張応力を負荷、除荷した試験片を用意し、4.2 K、外部磁場中で臨界電流測定を行う。この結果から、極細Nb3Sn線材の素線、撚線の引張許容応力を評価する。 以上により、React&Wind法の適用が期待できる低コストな高磁場加速器用超伝導マグネットのための新しいNb3Sn超伝導導体の基盤技術を完成させる。
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