研究課題/領域番号 |
21H04483
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
野村 正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10283582)
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研究分担者 |
松村 徹 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (00545957)
山中 卓 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (20243157)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 中性K中間子 / 中性ビームライン |
研究実績の概要 |
本研究は,中性K中間子の非常に稀な崩壊過程を探索する実験研究(J-PARC KOTO実験)において,中性ビームラインの高機能化を通して背景事象の理解と定量評価を進め,信号発見能力を高めることを目的としている. KOTO実験では中性ビーム中に混入する荷電粒子をビーム領域外に掃き出すための永久磁石をビームライン最下流に設置する予定となっており,本研究では,新設する永久磁石と共存しつつビーム整形機能を保つことができるような既存コリメータシステムの改造,および,新設磁石とコリメータシステムの位置関係を遠隔で操作する駆動システムの構築を行うことを2022年度の目標として研究を遂行した.シミュレーションによる性能評価の後,駆動装置の設計を完了し,製作と駆動試験を完了した. KOTO実験のビームコリメータは真空中に設置されており,コリメータシステムの改造に伴った真空排気系の増強も必要となる.新コリメータ本体やビームライン直後に設置する検出器からの脱ガスの影響を受けることが予想され,以前の運転実績も踏まえた検討により,通常型のターボ分子ポンプを磁気浮上型に置き換えた真空排気系を導入することとし,その設計と機器準備を行った. ビームライン増強作業は2023年度夏に計画されており,その後に行う性能実証に向け,ビームラインの評価シミュレーションを行なった.また,ビームライン性能が稀崩壊探索における背景事象数に及ぼす影響を評価し,荷電K中間子に起因する要素は十分に無視できるレベルまで抑制でき,中性子や中性K中間子の漏れ出しによる背景事象の増加は制御可能な量に抑えられると期待できることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビームラインの高機能化の設計やコリメータの改造計画,位置出し装置の設計と製作など,当初の予定通りに遂行出来ている.真空系の増強については,既存真空系の以前の運用において故障を起こしたターボ分子ポンプの内部分析を行なった結果,脱ガスによる影響を再度詳細に検討する必要が出てきたために繰越を伴う遂行となったが,当初より予定していたビームライン増強作業自体には十分完了することができており,全体計画に遅れを生じることはなかった.
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今後の研究の推進方策 |
まず,J-PARCの加速器運転予定としては,2023年度夏前にメインリング加速器運転が期待されており、増強前の中性ビームラインを用いた最終評価を行う計画にしている.特にビームライン出口に新設された新しい荷電粒子検出器の動作確認と中性ビームに対する影響を評価するためのデータを取得する.その後,2023年夏季のメンテナンス期間中に,ビームラインの高機能化のための実作業を行う.荷電粒子を掃き出す大型永久磁石の導入,磁石とコリメータシステム間の位置出し用駆動システムの設置と動作確認などを行う.年度後半には高機能化したビームラインを用いたK中間子稀崩壊探索データの収集を行い,世界最高感度の探索を達成する.また,2021年度に取得したデータの解析を完了させ,国際会議などで公表する.
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