研究課題/領域番号 |
21H04489
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
矢島 秀伸 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (10756357)
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研究分担者 |
松田 有一 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (20647268)
井上 昭雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (30411424)
児玉 忠恭 東北大学, 理学研究科, 教授 (80343101)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 銀河形成 / 輻射輸送 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
大規模な宇宙論的流体計算によって原始銀河団領域の銀河形成過程を明らかにした。新しくシミュレーションプロジェクトFOREVER22 (FORmation and EVolution of galaxies in Extremerly overdense Region motivated by SSA22)を立ち上げ、国内外の銀河理論、観測研究家とともに原始銀河団領域における銀河の物理的性質や星形成過程について調べた。結果として、赤方偏移3では、原始銀河団では星形成が早く進み、平均密度場と比較して、領域としての星形成率や星質量が2-10倍程度大きくなることが分かった。一方で、星形成率と星質量の関係では、原始銀河団の銀河は平均的な密度場と同様の関係性にあることが分かった。したがって、原始銀河団ではハロー質量は平均的な密度場に比べ大きいが、同様の質量のハロー同士を比較した場合には環境による差は小さいことを明らかにした。 同時に、より初期宇宙の小さい領域に絞って、超高分解能な銀河形成シミュレーションを行った。この計算では、ミニハロー内部の構造を分解し、初代星形成の計算を行った。そして、初代星の超新星爆発による重元素汚染、初代銀河の形成までをシミュレーションにより直接調べた。結果として、初代銀河の星形成率やガス質量は、初代星の初期質量関数に大きく依存することが分かった。初代星の初期質量関数が大質量星をより形成する場合には、超新星爆発の頻度が増え、そして平均エネルギーが大きくなることで初代銀河形成領域のガスの総量が減るためである。上記の計算により、初代銀河から原始銀河団領域いたる銀河形成過程の星形成やフィードバックに関する側面を明らかにする事が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、理論的に原始銀河団領域での銀河形成過程を調べ、大規模構造と銀河の関係、爆発的星形成の起源、そして初代銀河から宇宙再電離への影響を明らかにする事を目的としている。当該年度では、そのベースとなるシミュレーションの実行、解析、観測との比較を始め、初期成果を得る事を予定していた。数値シミュレーションとその解析は順調に進み、初期成果として主に原始銀河団の観測データが豊富にある赤方偏移3において銀河の物理量の統計的性質を明らかにした。そして、星質量と星形成率の関係、銀河のガス質量、重元素量、サブミリ連続波強度などに関して観測データと直接比較し、平均密度場と原始銀河団で大きな差が無い事などを明らかにした。加えて、計算コードの開発を行い、初代星から初代銀河に至る進化を精度良く計算するためのモデルを新たに計算に加える事に成功した。これら、数値シミュレーション、解析、計算コード開発の点においておおむね順調に研究計画が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究データ、計算コードを活かして、さらに広い赤方偏移の範囲で銀河形成過程を統計的に調べていく。具体的には、原始銀河団領域における大質量銀河周囲のガスのインフローとアウトフローの関係、それによるクエーサー吸収線系の分布について調べる。これらは、今後稼働を始めるすばる望遠鏡Prime Focus Spectrographのメインターゲットの一つであるため、世界に先駆けて理論と観測の比較研究を行い銀河周囲のガスの状態を明らかにする事は重要である。また、原始銀河団領域における大質量銀河と超大質量ブラックホール形成の関係、種族III星から種族II星への遷移過程を解析していく。これにより、大規模構造、大質量銀河、そしてその中の星の状態やブラックホール成長過程までの広い空間スケールにわたって現象を統一的に理解していく事を目指す。加えて、多波長輻射輸送計算を実行することで、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡、アルマ望遠鏡、すばる望遠鏡などの最新観測データと直接比較を可能にし、観測された銀河の物理的性質を明らかにしていく。
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