研究課題/領域番号 |
21H04494
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松岡 良樹 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 准教授 (60547545)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 遠方クエーサーの発見と測定 / ブラックホールの種族調査 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Camの広域探査データから遠方クエーサー候補天体を抽出し、天体同定のためのスペクトル測定を実施した。この測定のために4月にすばる望遠鏡のFOCAS分光器を使用し、さらに年間を通して、スペイン領カナリア諸島に設置された大カナリア望遠鏡のOSIRIS分光器をキューモードにて使用した。得られたデータの解析から、新たに多数の遠方クエーサーを発見することに成功した。前年度までに蓄積された天体と新規発見天体を組み合わせ、遠方宇宙における数密度の測定を行なった。そのためには、探査の完全性、すなわち実際に遠方宇宙に存在するクエーサーのうち、何%を探査によって捉えられているかを、赤方偏移と光度の関数として計算しなければならない。そのために人工的なクエーサーモデルを作成してHyper Suprime-Camの画像に埋め込み、擬似観測・データ抽出を実施した。これにより完全性の関数を得て、探査による発見数を補正する形で、遠方クエーサーの数密度を測定した。これを光度の関数として描き、更なる調整を経て、あらゆる天体の最も基本的な観測物理量である「光度関数」を得ることが次のステップとなる。 また、遠方クエーサーの理解を側面から深めるために、より近傍宇宙におけるブラックホール種族の探査を進めた。銀河系内の恒星質量ブラックホールへの伴星からの質量供給に伴って起こるX線連星・アウトバーストに加えて、近傍銀河に見られる超高光度X線源についてHyper Suprime-Camの撮像データから環境を探り、その起源が中間質量のブラックホールであるか否かに結論を得るための研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の目標の1つは、各赤方偏移におけるクエーサーの光度関数を描くことである。光度関数をビッグバン開始以降の時間の関数としてつなぐことで、巨大ブラックホールの形成・進化を紐解くことができる。当該年度には赤方偏移7付近においてクエーサー探査を順調に進め、探査の完全性の見積もりを終えて、光度関数を決定するための準備を全て終えることができた。このことから、計画はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
赤方偏移7付近における光度関数を完成させるため、赤方偏移と光度の関数としての完全性のさらなる検証・調整を進める。その後に我々の発見した低光度の遠方クエーサーを、先行研究で発見されている高光度の遠方クエーサーと組み合わせ、この赤方偏移における光度関数を決定する。さらに光度関数を積分することでクエーサーの電離光子放射率を測定し、宇宙再電離への遠方クエーサーの寄与率を推定して、再電離の起源に制限を与える。 一方で欧州宇宙機関が主導するEuclid衛星の打ち上げが近づくことから、そのデータを用いたさらなる遠方クエーサー探査を見据えて、データの性質、候補抽出のアルゴリズムなどについて検討を進める。
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