• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実績報告書

ALMA大型観測プログラムによる原始星円盤における惑星形成の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H04495
研究機関鹿児島大学

研究代表者

高桑 繁久  鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (50777555)

研究分担者 西合 一矢  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30399290) [辞退]
相川 祐理  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40324909)
富田 賢吾  東北大学, 理学研究科, 准教授 (70772367)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2025-03-31
キーワード惑星形成 / ALMA望遠鏡 / 原始星
研究実績の概要

本研究は、国際共同研究体制の元に実施中のALMA望遠鏡の大型観測プログラム「eDisk」により、生まれたばかりの星「原始星」周囲における惑星の形成過程を明らかにすることである。eDiskの観測、データキャリブレーションは昨年までに完了し、現在は、プロジェクト全体を紹介するoverview paper, および個々の天体ごとに初期成果をまとめるfirst-look papersを執筆中である。波長1.3-mmのダスト連続波では、19天体に及ぶ観測天体すべてにおいて、半径数天文単位から数百天文単位と大きさのバラエティに富んだダスト円盤が存在することが明らかになった。さらにこれらのダスト円盤において、惑星の存在を示唆する溝状の内部構造が最も進化段階が進んだ2天体(L1489 IRS, IRS 63)のみでみられた。この観測結果は、惑星形成が中心星の進化に伴って段階的に進んでいる様相を反映している可能性がある。
一方、分子輝線による観測では、原始星円盤に付随する分子ガスを検出することに成功した。円盤中の分子ガスの運動は、太陽系の天体と同様のケプラー回転運動を示しており、円盤が惑星形成の現場となっていることを示している。またこれにより、光学観測では検出されないためこれまで見積もりが非常に困難であった原始星の質量を見積もることにも成功した。さらに円盤の外側では、角運動量を保存しつつ円盤に向かって自由落下するストリーマーの成分が5天体でみられた。こういった降着ストリーマーは惑星形成の現場である円盤の成長過程を表しており、惑星形成過程の初期状態を決定付けている可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究は概ね順調である。まず観測データの質の評価、キャリブレーション、画像作成(イメージング)については、アメリカ国立電波天文台の共同研究者からの大きな貢献により、非常に迅速に完了することができた。イメージング後のデータ解析においては、いくつかの解析ツールを開発してきた。とりわけ東アジアの共同研究者が開発した、円盤の回転状態と中心星の質量を求めるpython module (SLAM)は、eDisk project全体の共通解析ツールとして、first-look paper の全てに使用されている。
鹿児島大学のグループは、eDiskの対象天体の中で最も進化段階の若い原始星である、CB68のfirst-look paperの執筆、およびeDiskの観測結果を再現、説明するための輻射輸送モデルの構築を担当している。CB68の1.3-mm連続波のデータ解析からは、原始星周囲に半径20天文単位程度のダスト円盤が存在することを明らかにした。円盤中のダスト連続波の強度分布を調べたところ、短軸方向に非対称な分布を示している。この非対称な分布を輻射輸送モデルを用いて考察した結果、ダストが円盤の上空に浮かんで存在している(flaring)ために、このような非対称な強度分布を示していることが明らかになった。
また分子輝線のデータ解析からは、円盤のケプラー回転運動を検出し、原始星の質量が 0.14太陽質量であることが示された。さらにCB68においては、1500天文単位に渡って広がったストリーマーが存在していることも明らかになった。このストリーマーの空間速度構造を再現するモデルを作成したところ、この構造は遠心力半径100天文単位程度の角運動量を持つ自由落下ガスであることが明らかになった。
CB68の論文はすでに投稿し、レフリーコメントを受けての改訂、再提出も済ませている。

今後の研究の推進方策

本年度はまずは5月10日締め切りのALMAの観測プロポーザル(Cycle 10)の執筆に全力を尽くす。eDiskのこれまでの観測結果を受けて、より研究を進化させるための様々なフォローアップ観測を検討している。例えば、円盤に向かって落ち込む降着ストリーマーが、原始星天体においてどれくらい普遍的なものなのか、原始星や円盤の成長過程においてどれくらい本質的なのか、を議論するための観測プロポーザルを研究代表者が中心となって執筆している。
ALMA観測プロポーザルの提出の後は、投稿中、あるいは準備中のeDisk first-look papers を全て出版することを目指す。鹿児島大学が中心となって執筆したCB 68の first-look paperについては、ほぼ受理寸前まで進んでいる。今後は他の共同研究者が執筆しているfirst-look paperの指導、助言を積極的に行なっていきたい。この際、ただコメントするのみならず、自身で作成したモデルやツールの提供など、より実践的な貢献をしていく。eDisk first-look paperと並行して、研究代表者が執筆している輻射輸送モデルの論文もできるだけ早く出版する。
既存のeDisk データを用いたより系統的な議論を行う 2nd generation papers の検討も先月から始まっている。ここでは研究代表者は、円盤の周囲の分子ガスの構造「エンベロープ」のサイエンスグループのリードを務めている。世界中の研究者を束ねて最先端の成果を出すことを求められる。自身のベストを出してこの重責をつとめ、年度末には2nd generation の最初の論文の投稿を目指したい。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] 台湾中央研究院/国立清華大学(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      台湾中央研究院/国立清華大学
  • [国際共同研究] National Radio Astronomy Observatory/University of Virginia/University of Illinois(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      National Radio Astronomy Observatory/University of Virginia/University of Illinois
    • 他の機関数
      1
  • [国際共同研究] KASI/Seoul National University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      KASI/Seoul National University
  • [国際共同研究] University of Copenhagen(デンマーク)

    • 国名
      デンマーク
    • 外国機関名
      University of Copenhagen
  • [雑誌論文] Increasing Mass-to-flux Ratio from the Dense Core to the Protostellar Envelope around the Class 0 Protostar HH 2112023

    • 著者名/発表者名
      Yen Hsi-Wei、Koch Patrick M.、Lee Chin-Fei、Hirano Naomi、Ohashi Nagayoshi、(Insa Choi) Jinshi Sai、Takakuwa Shigehisa、Tang Ya-Wen、Tatematsu Ken’ichi、Zhao Bo
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 942 ページ: 32~32

    • DOI

      10.3847/1538-4357/aca47f

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A VLA View of the Flared, Asymmetric Disk around the Class 0 Protostar L1527 IRS2022

    • 著者名/発表者名
      Sheehan Patrick D.、Tobin John J.、Li Zhi-Yun、van ’t Hoff Merel L. R.、Jorgensen Jes K.、Kwon Woojin、Looney Leslie W.、Ohashi Nagayoshi、Takakuwa Shigehisa、et al.
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 934 ページ: 95~95

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac7a3b

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Vibrationally Excited Lines of HC3N Associated with the Molecular Disk around the G24.78+0.08 A1 Hypercompact H ii Region2022

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi Kotomi、Tanaka Kei E. I.、Zhang Yichen、Fedriani Ruben、Tan Jonathan C.、Takakuwa Shigehisa、Nakamura Fumitaka、Saito Masao、Majumdar Liton、Herbst Eric
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 931 ページ: 99~99

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac69d1

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Carbon-chain Chemistry versus Complex-organic-molecule Chemistry in Envelopes around Three Low-mass Young Stellar Objects in the Perseus Region2021

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi Kotomi、Majumdar Liton、Takakuwa Shigehisa、Saito Masao、Lis Dariusz C.、Goldsmith Paul F.、Herbst Eric
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 910 ページ: 141~141

    • DOI

      10.3847/1538-4357/abe854

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Misaligned Twin Molecular Outflows from the Class 0 Protostellar Binary System VLA 1623A Unveiled by ALMA2021

    • 著者名/発表者名
      Hara Chihomi、Kawabe Ryohei、Nakamura Fumitaka、Hirano Naomi、Takakuwa Shigehisa、Shimajiri Yoshito、Kamazaki Takeshi、Di Francesco James、Machida Masahiro N.、Tamura Motohide、Saigo Kazuya、Matsumoto Tomoaki、Tomida Kengo
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 912 ページ: 34~34

    • DOI

      10.3847/1538-4357/abb810

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Misaligned Circumstellar Disks and Orbital Motion of the Young Binary XZ Tau2021

    • 著者名/発表者名
      Ichikawa Takanori、Kido Miyu、Takaishi Daisuke、Shimajiri Yoshito、Tsukamoto Yusuke、Takakuwa Shigehisa
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 919 ページ: 55~55

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac0dc3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chemical Compositions in the Vicinity of Protostars in Ophiuchus2021

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi Kotomi、Majumdar Liton、Plunkett Adele、Takakuwa Shigehisa、Lis Dariusz C.、Goldsmith Paul F.、Nakamura Fumitaka、Saito Masao、Herbst Eric
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 922 ページ: 152~152

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac214e

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ALMAよるClass II 連星 XZ Tau の互いに傾いた星周円盤と軌道運動の検出2022

    • 著者名/発表者名
      高桑 繁久
    • 学会等名
      連星系・変光星研究会2022 in 鹿児島大学
  • [学会発表] Current Status of the ALMA Large Program eDisk2022

    • 著者名/発表者名
      高桑 繁久
    • 学会等名
      新学術領域「新しい星形成理論によるパラダイムシフト」大研究会
  • [学会発表] 星と惑星形成の多様性を繋ぐ基礎研究2021

    • 著者名/発表者名
      高桑 繁久
    • 学会等名
      新学術領域「星惑星形成」後半戦キックオフミーティング

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi