研究課題
産業技術総合研究所の走査型SQUID磁気顕微鏡について、SQUIDセンサと試料の間の最短距離を138μmに短縮することに成功し、高分解能化・高感度化に向けてさらに前進した。北海道春採湖で採取された過去数百年の年縞堆積物および津波堆積物について、珪藻化石・岩石磁気の分析が進んだ。津波堆積物は12~13世紀のGTS2,17世紀のGTS1,1843年十勝沖地震の天保津波に対応すると推定される。GTS2とGTS1はM9クラス、天保津波はM8クラスの地震による。珪藻はGTS2後は海水種が上位に向かって減少することがわかった。これは,GTS2津波によってバリアー砂堆が一時的に消失し、徐々に回復したことを示唆する。モンゴルで採取された試料について、火成岩試料の古地磁気分析と年代測定、堆積岩の岩相解析を進めた。IZZI-Thellier法による770Ma花崗岩の絶対古地磁気強度暫定結果は1.1-3.3μT、446Ma流紋岩の結果は9.6-12.5μTであり、いずれもZhou et al. (2022)と同じく現在の地球磁場強度よりも小さい値を示すが、信頼性テストを完全にはパスしないので、さらに分析を進める。西之島で2014-2015年溶岩薄片試料の自然残留磁化を交流消磁してSQUID磁気顕微鏡を用いてインバージョンによって磁化分布を求めた。バルク試料からもとめた自然残留磁化強度は39.8~43.4A/mであったが、ピクセル毎の磁化強度はバルク試料の平均値を中心に分布し、整合的であった。また、交流消磁により磁化分布曲線が段階的に減少しつつ変化する様子が確認された。地磁気逆転境界の前後から採取した房総半島堆積物試料について、300°Cまでの段階加熱による元素分布とSQUID磁気顕微鏡イメージから加熱による磁性鉱物の変質と自然残留磁化のunblockingの情報を解析中である。
3: やや遅れている
新型コロナウィルス感染拡大により、2021年度に予定していたモンゴルでの試料採取が2022年度になったためモンゴル試料を用いた分析が若干遅れている。また、新型コロナウィルス感染拡大とその他の要因により液体ヘリウムの供給が不安定かつ価格が高騰しており、液体ヘリウムを必要とする走査型SQUID顕微鏡を用いた分析が若干遅れている。
磁気顕微鏡分析遅延を改善するために、補助金を液体ヘリウムに重点的かつ計画的に措置し、研究推進を行う。
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