研究課題/領域番号 |
21H04524
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
氏原 秀樹 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (40399283)
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研究分担者 |
市川 隆一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波標準研究センター, 研究マネージャー (40359055)
関戸 衛 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波標準研究センター, 研究マネージャー (60359057)
宗包 浩志 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 研究室長 (50370812)
小林 知勝 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 研究室長 (40447991)
宮原 伐折羅 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 技官(その他) (90825457)
寺家 孝明 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (40425400)
小山 友明 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 特任専門員 (70425403)
竹内 央 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (90329029)
今井 裕 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 准教授 (70374155)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 超広帯域 / リモートセンシング / VLBI / 測地 / 軌道決定 / 水蒸気 |
研究実績の概要 |
京大宇治キャンパスでOMTをつけた広帯域フィードの性能確認を行った。これらは研究代表者が研究協力者として参加した科研費基盤A(JP18H03828:市川代表)で開発した水蒸気(22GHz帯)、雲中の水(30GHz帯)、酸素(50GHz帯)の3バンドが同時受信可能な広帯域受信システムを改良し、16-64GHzのほぼ全てを観測可能としたものである。しかし全帯域が受信できて冷却可能なLNA(低雑音アンプ)はまだ特注品で高価である。そのため水蒸気と水を観測するLNA用の導波管ポート(16-34GHz)と、水と酸素を観測するLNA用の同軸ポート(26-62GHz)を持つOMT(直交モード変換器)を開発し、2つの直線偏波に分けて受信する構造である。本館屋上では仰角と方角を変えながら大気の放射電力を測り、常温および液体窒素で冷却した電波吸収体の放射電力と比較して大気観測ができることを確認した。NICT小金井ではOMTの損失測定を行った。
この広帯域VLBI受信機の実証実験の準備として、国立天文台野辺山45m電波望遠鏡に22GHz帯(両円偏波)+43GHz帯(両直線偏波)の同時観測システムを構築した。またデジタル分光型水蒸気ラジオメーターの分光データ処理スクリプトの更新を進め、MATLABからPython scriptへに変換して開発汎用性を向上させた。これによりVLBI観測スケジュールを読み取り、分光データから得られた大気超過遅延残差の測定値から観測天体方向の推定値へ変換するスクリプトの開発を進めた。同VERAアンテナでは実証実験に備えて、高速度記録系のストレージの購入を進めた。NICTと国土地理院では解析用計算機の整備を進め、JAXAでは試験サイトの調査を行った。
国内研究会では天文学会、測地学会、WPT研究会、VLBI懇談会、国際研究会ではRFI2022、IVS総会にて発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
京大宇治キャンパスでの屋外での大気観測試験とNICT小金井でのVNA(ベクトル・ネットワークアナライザ)による性能測定で、開発した超広帯域フィードとOMTは簡素な構造ながらほぼ全帯域(16-64GHz)で使用可能であることが確認できた。京大生存圏研究所のMETLABにて43GHzまでの広帯域フィードのビームパターンの測定を行い、ビームパターンの変形をもたらすOMT内部での高次モードの発生が小さいことが確認できた。これらにより改良のための工数を削減できた。
新型コロナによる出張・出勤制限のため参加機関の小型アンテナに受信機を仮設しての大気観測による受信機の試験計画は不可能となり、超広帯域受信機開発へのフィードバックが得られない状態であった。そのため京都大学で小型可搬局を製作することとし、主鏡用にヘラ絞りによる軽量な90cmパラボラ鏡を国立天文台の三好助教から提供していただいた。これとCFRPパイプと光学望遠鏡用架台で軽量な可搬局を製作し、本課題で開発する超広帯域受信機のテストベンチに用いるとともに参加各機関に持ち込んでの試験観測にも利用することとした。同じく小型可搬局と称する小金井2.4mより口径が小さいものの、事前にMETLABで光学系の調整を行った後、組み立て状態のままでJR貨物のコンテナや小型トラックによる輸送が可能である。輸送時の分解・組み立てによる光学系の誤差がなくなり現場での光学系が調整に不要となること、光学系の精度が保証できることは大きなメリットである。
超広帯域受信系については観測時に各機関のスペアナを借用する計画を変更し、ハンディスペアナの複数並列で構成することとした。これにより受信システムが軽量・小型化され、100V電源がなくてもバッテリーで観測が可能になる。また各参加機関への新型コロナの影響と無関係に、京大のみで開発と基礎実験を進められる体制を整えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は京大METLABにて90cm可搬局の調整と性能試験を行い、水蒸気ラジオメータ機能を試験する。夏にNICT鹿島本館屋上で海上、工場地帯、陸上の大気を観測し、水蒸気ラジオメータ機能の実証実験を行う。現地は高分解能観測の実証に適した工場の煙突からの水蒸気を含む排煙が期待でき、少なくとも海方向は宇治キャンパスでの試験で観測された地上のミリ波の通信がないと思われ、検証に好適である。
次にVLBIの検証実験については、今年度はデータ記録装置の整った国立天文台の水沢10mの利用を予定している。まずは可搬局で水蒸気を測り、超短基線でK/Qバンド(22/43GHz)のVLBI観測の実証を行う。その後、NICT小金井2.4mあるいは野辺山45mとのVLBI観測の実証実験を行う。その準備として小金井2.4mの現広帯域フィード(3.2-16GHz)を新開発の広帯域フィード(4-16GHz)に交換して小型化する。将来的には3.5GHzのRFIを遮断して受信機雑音温度の低下を目指す。小型化で空いたスペースには本課題で開発した超広帯域受信機(16-64GHz)を併設できるようにし、信号伝送系は拡張する。口径が小さいと観測可能な天体も限定されるがVLBI観測に使える周波数は2本の広帯域フィードで4-43GHzとなるため、相手局が水沢でも野辺山でも臼田でも国土地理院でも実証実験が可能になる。
感度向上のため、OMTの伝送損失低減を目指した改良を継続し、スターリング冷凍機による100K程度のLNAの冷却を目指したコンパクトな受信機容器の設計も検討する。 研究代表者が研究協力者として参加した科研費基盤A(JP18H03828:市川代表)の改良と本課題で開発する超広帯域受信機で、受信機は合計2台となる。これらと参加各機関のアンテナや小型可搬局を様々に組み合わせ、水蒸気観測とVLBI観測の実証試験を行っていく。
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備考 |
京都大学生存圏研究所ミッション専攻研究員の研究内容紹介
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