研究課題/領域番号 |
21H04531
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木崎 通 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (30771901)
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研究分担者 |
杉田 直彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70372406)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 精密加工 / ロボット加工 / 母性原理 / センシング / 熱変形 / 動特性 / 刃先温度 / 幾何誤差 |
研究実績の概要 |
前年度までに行った基本設計をもとに,移動型加工ロボットの詳細設計を実施した.パラレルリンク機構の各腕は長さ1400 mmのボールねじで構成される.制御システムは拡張性を考慮してBECKHOFF社のシステムを採用した.この設計に基づきモータやベアリングを購入した.モータやナットを格納するハウジングを加工した.本加工ロボットに用いる主要部品は大学の中で内製することとした. 多点温度センサを用いた熱変位推定について,クリロフ部分空間法を適用することにより,推定にかかる時間を大幅に削減することに成功した.クリロフ部分空間法により低次元化して得られた状態空間モデルに基づき,工作機械に設置した各センサの影響度を算出する手法を提案した.影響度とは各センサの位置の温度が1 ℃上昇した場合に工具変位にどの程度影響を与えるかを意味する量である. 多点振動センサを製造し,動作試験を実施した.その結果想定した性能を有することを確認した.多点振動センサを用いて加工機の動特性をリアルタイムで推定するアルゴリズムを提案した.通常のインパルス応答試験では,インパルス入力を与えた際の応答を振動センサで測定することにより動特性を推定する.今回提案した方法はインパルス入力を必要とせず,多点で測定した振動データを相互に比較することにより動特性を推定する.任意の二点で測定した振動を比較した量をTransmissibilityとよび,この量を用いて動特性を推定した.シミュレーション上でその有効性を確認した.加工機は加工中にも動特性が変化する.主な原因は温度変化に伴う与圧,接触剛性,予張力の変化である.これらはあらかじめ推定することが困難であるため,加工中に動特性を実測することが重要となる. 温度センサと工具を一体で焼結した新たなセンサ埋設工具について,ステンレスを用いて製造することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BECKHOFF社製コントローラの納品遅れにより,納品が次年度にずれ込む.納品関係以外についてはおおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
ハウジングの加工を実施したが,そのほかの部品の加工を継続して実施する.またベッドは鋳造で製造することを想定しているため,外部の業者に発注する.組み立て手順を整理し,まずはパラレルリンク機構の腕を一本完成させることを目指す. 熱変位推定に関して,多点温度センサをどのように配置すれば高い精度で熱変位を推定できるかは未知である.センサの配置戦略を検討する必要がある. Transmissibilityに基づく動特性のインプロセス同定手法を提案したが,実機での実証はできておらず,実施する必要がある.また,動特性を推定したうえで振動をキャンセルする手法についても開発が必要である.例えばアクチュエータを付与することで振動をアクティブにキャンセルする手法が考えられる. センサ埋設工具についてはステンレスで製造できることを実証したものの,成功率が低い.熱電対と周囲の絶縁膜の熱膨張率の違いにより絶縁膜が剥離して導通することが主原因の一つであった.そのため,絶縁膜と熱膨張率が近い値を有する熱電対素線を用いることにより問題を解決する.またステンレスでもある程度加工ができるものの鉄鋼といった材料を加工することはできない.そこでTungsten carbide (WC,超硬)を用いて同様なセンサ埋設工具の製造を試みる.超硬を用いたセンサ埋設工具が実現すれば,学術界のみならず産業界へのインパクトも大きい.
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