研究課題/領域番号 |
21H04541
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
今井 陽介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60431524)
|
研究分担者 |
林 周宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60373354)
滝沢 研二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60415809)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
|
キーワード | 計算生体流体力学 / 計算バイオメカニクス / 流体構造連成解析 / 細胞運動 / 組織形成 |
研究実績の概要 |
哺乳類の大脳皮質深部で誕生した神経細胞(ニューロン)は,三種類の移動モードを駆使して脳表層に到着し,インサイドアウトと呼ばれる六層構造の大脳皮質を形成する.本研究の目的は,流体構造生化学連成解析とイン・ビボ細胞実験の統合的な手法によって,ニューロンの移動モードの変化とインサイドアウト構造の形成メカニズムを力学に基づいて明らかにすることである.そのための基盤計算技術として,細胞膜の固体力学,細胞質と細胞外の液体の流体力学,細胞接着タンパクと細胞骨格タンパクの生化学反応を連成するトランススケール流体構造生化学連成解析手法を開発する. 2022年度は,第一に,2021年度に開発した局所的な生体膜の面積増加と薄膜の力学を記述する計算モデルを,細胞質および細胞外環境の流体力学と連成する計算手法を開発した.具体的には,ストークス流れの流体力学を境界積分方程式を用いて記述し,アイソジオメトリック解析に基づく境界積分法(アイソジオメトリック境界積分法)を新たに開発した.第二に,神経細胞の力学特性のみ(細胞膜の弾性と細胞質の粘性)を考慮した計算モデルを用いて,トランスロケーションにおける神経細胞の先導突起の短縮に必要となる力学条件を検討した.数値実験と過去の細胞実験の時間スケールを比較し,先導突起の短縮には,細胞骨格がブレーキのような作用している可能性が示唆された.これらの結果に基づき,細胞骨格の重合・脱重合と細胞膜の面積変化の数理モデル化に着手した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜の固体力学,細胞質と細胞外の液体の流体力学,細胞接着タンパクと細胞骨格タンパクの生化学反応を連成するトランススケール流体構造生化学連成解析手法の基礎技術の開発は完了した.樹状突起スパインの形態形成や好中球と血小板の相互作用への応用,さらには,Kirchhoff-Love shell理論に基づくシェルモデルとの連成計算など,当初計画にはなかった発展もあるなど,順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において,神経細胞の先導突起の短縮には,細胞骨格がブレーキのような作用している可能性が示唆された.現在開発している細胞骨格の重合・脱重合と細胞膜の面積変化の計算モデルをトランススケール流体構造生化学連成解析手法に導入し,先導突起における細胞膜と細胞骨格の相互作用を数値解析する.また,細胞実験においても同様の現象がみられるか観察することに挑戦する.
|