研究課題/領域番号 |
21H04545
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福島 誉史 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10374969)
|
研究分担者 |
木野 久志 東北大学, 医工学研究科, 特任准教授 (10633406)
田中 徹 東北大学, 医工学研究科, 教授 (40417382)
ベ ジチョル 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任准教授 (40509874)
清山 浩司 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (60412722)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
キーワード | フレキシブルデバイス / マイクロLEDディスプレイ / 3D-IC / FOWLP / 常温接合 |
研究実績の概要 |
高い柔軟性を有するフレキシブルデバイスの課題である性能と機能の問題を解決するため、微小な無機単結晶半導体チップ(チップレット)の概念を拡張した「ダイレット」をSiウエハ上で柔軟な樹脂に埋め込み圧縮成型するインモールド・エレクトロニクスの技術基盤を創成する。この新しい電子システム集積学を構築するため、毛髪の直径(100μm)以下の一辺を有する微小チップ(ここではMicro-LED)を目的の場所に搭載するアセンブリの技術開発を行う。また、研究代表者が長年かけて学理の体系化に尽力した脳型の三次元積層集積回路(3D-IC)と微小チップのインテグレーションを基軸とし、従来の半導体技術では実現が難しい浅皮下生体情報(主に血管)可視化シートを作製する。本研究の成果は、電子デバイスの可能性を広げて電気電子工学や医工学分野の発展に大きく貢献するだけでなく、曲がるデバイスの応用に限らず、立体的なエレクトロニクスのシステム集積にインパクトをもたらす。本研究では、チップレットの概念を発展させ、受動素子やLED等の小型化するベアダイまで含めた「ダイレット」をウエハレベルでフレキシブル基板に埋め込んで成型し、微細配線でチップ間を短距離接続した高集積なインモールド・エレクトロニクスと呼ぶシステム集積方法論の技術基盤を創成する。基板レスで微細化でき、高性能で柔軟且つ立体成型可能なこの集積手法の鍵となるのは、微小チップ「ダイレット」のアセンブリ技術とインターコネクト技術となる。2022年度は主に、フレキシブル多層配線の形成技術の確立を目指して研究開発を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は主にフレキシブル多層配線の形成技術の確立を目指して研究開発を行った。柔軟性を高めるために水平方向ではなく三次元方向に蛇行する微細配線の形成を行った。そのためにまず必要となったのが、感光性の三次元波状構造である。SU-8を用い、Serpentine構造(三次元波状構造)、あるいはTrapezoidal構造(正テーパー構造)の形成を試みた。主に3つの方法で取り組んだ:1)プロキシミティギャップ制御法、2)グレースケールマスク法、3)二重塗布法。1)の方法では、マスクとSU-8の距離をコントロールし、やや過剰な露光制御と併せて、SU-8側壁を正テーパー形状に加工した。2)の方法では、フォトマスクに約2μm角のドットを用いて、専有面積をコントロールすることでプロキシミティギャップを大きく設けずとも露光量を実効的に制御し、グラデーションのかかるリソを行った。3)の方法は、既定のリソ条件通りにSU-8を露光してSU-8の矩形パターンを形成した後、SU-8を上塗りし、矩形パターン間に働く毛管力で曲面構造を形成した。1)の手法では、露光量を大過剰にするとTrapezoidal構造を形成できる兆しがうかがえたが詰め切れなかった。2)の方法では、理論上、両方の三次元パターンを得られるはずであったが、手持ちのフォトマスクの最小ドットサイズを小さくできなかったため、思い通りの構造を得られなかった。3)の方法では、理想に近い構造の三次元波状構造が得られた。その後、三次元波状構造にAuを堆積し、通常のリソグラフィ条件で最小パターン寸法としてLine/Spaceで20/20μmの三次元波状構造を有するAu配線をPDMS上に得ることができた。なお、年度をまたいだ理由は、PDMSと三次元波状構造を低応力でつなぐ薄い応力緩衝層パリレン膜であり、この装置導入が遅れたからである。
|
今後の研究の推進方策 |
三次元波状光の形成とその上の配線形成は順調に進んだが、曲げ特性をみるとまだ十分とは言えない。テンションフリーの繰り返し曲げ試験で、曲げ半径5mm、曲げ速度30rpm/min、繰り返し曲げ回数1000回で試験したところ、通常の平らでまっすぐな配線は、曲げる前に比べて10倍以上の抵抗増加を示したのに対し、三次元波状構造を有する立体配線では、曲げる前に比べて2倍以内の抵抗増加で収まった。しかし、十分とは言えない。そこで、感光性、且つヤング率の低い材料を用いて三次元波波状構造を作製することが今後の研究には有効だと考えられる。また、2層配線では、2層全てを波状構造にすることは難しいので、1層目は応力中立軸の制御で対策し、2層目は三次元波状構造で柔軟性を付与できるように計画していく。
|