研究課題
以下の研究実績を得た。1. BaSi2膜の形成に用いるスパッタ装置にロードロックャンバーを設置した。これにより、成膜時の基板導入および成膜後の基板取り出しの際に、成膜室が大気に曝されないようになった。従来、成膜時に基板を導入するたびに成膜室内に設置したターゲット材料(特にBa)が酸化して、大変使い難かった点が解消された。2. BaSi2ターゲットのみをスパッタして形成したBaSi2膜は、Baが不足することが分かっている。この問題を解決し、形成するBaSi2膜の化学量論組成を達成するために、不足しがちなBaについて、BaSi2ターゲットのみのスパッタ堆積ではなく、BaSi2ターゲット上にBa片を置いて、同時スパッタにより供給してきた。しかし、堆積のたびに徐々にBa片が小さくなるため、実験の再現性を確保することが難しい問題を抱えていた。この問題をスパッタ用のBa用のスパッタガンを設置し、BaSi2とBaターゲットの同時スパッタをすることで解決し、高品質なBaSi2膜の形成を実現した。3.スパッタ法によりホウ素(B)ドープp型BaSi2膜の形成を試みた。具体的には、BaおよびBaSi2ターゲットと、BドープSiターゲットを同時にスパッタし、Bドープp型BaSi2膜を高抵抗Si基板上に形成した。成膜後、ホール測定により、ホール密度およびホール移動度を評価したが、as-grownでは、電子密度が1ccで10の16乗台のn型であった。分子線エピタキシー法では、Bドープp-BaSi2膜を形成できているので、n型伝導は、スパッタ法で形成したBaSi2膜中の酸素濃度が高いことが原因と考えている。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」で記述したように、当初計画していた3つの事柄のうち、2つを達成することができた。このため、おおむね順調に進展していると判断した。計画通りに進まなかったのは、ホウ素(B)をスパッタ堆積時にドープしたBドープBaSi2膜がp型伝導を示さず、予想に反してn型伝導を示したことである。
ホウ素(B)をスパッタ堆積時にドープしたBドープBaSi2膜がp型伝導を示さず、予想に反してn型伝導を示した原因は、まだ明確になっていない。しかし、スパッタ法で形成したBaSi2膜には、大量の酸素(1cc当たり10の20乗台)が含まれており、分子線エピタキシー法で形成した膜に比べて100倍多いことが、SIMS測定で分かっている。このため、BaSi2にホウ素と酸素が不純物として同時に存在するときに、ホウ素がアクセプターとして働くか否か、まず、第一原理計算で形成エネルギーの視点から検討する。同時に、ホウ素をドープしたBaSi2膜をアニールすることで、伝導型やキャリア密度がどのように変化するか調べる計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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