研究課題
今年度は、酸化物半導体の三次元集積および三次元構造メモリの実現に必要な、酸化物半導体の原子層堆積法による成膜技術を中心に研究を進めた。具体的には、In、Ga、Zn、Snの単元素酸化物の成膜条件を見出し、まずは単元素酸化物半導体であるIn2O3を用いたメモリデバイスの研究開発を行った。シリコン基板上にEB描画とドライエッチングで形成した直径100nm未満深さ200nm程度のトレンチ構造を形成し、そこにHfO2系強誘電体を成膜し、次に開発したIn2O3を原子層堆積層で成膜し、プロセス加工することで、垂直チャネル型の強誘電体トランジスタ(FeFET)メモリを試作した。電気特性では、強誘電性のヒステリシスを示すメモリ特性が得られ、メモリウィンドウとして1.5V以上の良好な値が得られた。また書き込み10^3以上、保持時間10^3秒以上の良好な値が得られた。この結果は高密度・低消費電力なストレージ用メモリデバイスとして有望な特性といえる。さらに今回、酸化部半導体のFeFETの消去特性を改善する方法として反強誘電体のハーフループヒステリシスを用いる手法を提案し、FeFETと同様のプロセスによりAFeFETを試作した。こちらもデバイスシミュレーションの予想通りのメモリ特性を得ることができた。その他には、第一原理計算と電子線回折マッピング法を用いることにより、HfO2系強誘電体が、成膜時には面内配向しているものが、電圧ストレスを印可することで面直配向することが実験・理論の両面から明らかとなった。この結果は三次元構造でも強誘電性を有効に生かせることを示唆している。以上の研究成果は次年度以降の三次元集積および三次元構造メモリデバイスの実現にとって重要な基盤技術となった。
2: おおむね順調に進展している
酸化物半導体の原子層堆積法による成膜プロセスについては、事前に技術調査を念入りにおこない実験計画を立てたため、スムーズに開発することができた。デバイスの設計においてもデバイスシミュレーションによりあらかじめ設計指針を立てることによって、勘に頼らないデバイス試作と実証ができている。またフリップチップボンディングについても、昨年度から材料・装置の準備を入念に行っていたため、要素技術の開発を順調に進めることができた。
今年度は、昨年度確立した酸化物半導体の原子層堆積法をもとに、高移動度・高信頼性のナノ薄膜酸化物半導体の成膜プロセスを確立する。そして、メモリ素子との集積化による配線層へのモノリシック集積可能なメモリデバイスを実現する。また、三次元トレンチ構造の作成にも成功しているため、そこへの均一な酸化物半導体の成膜により、閾値制御可能な三次元構造強誘電体トランジスタメモリの実現を目指す。
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