研究課題
本研究では界面ダイポール効果を始め,界面のバンドアライメントを変化させる様々な現象についての理解を進めてきた。前年度までに4H-SiC(0001)ウェハに4点曲げを用いて機械的応力を加えるとSiC/SiO2 MOSキャパシタのフラットバンド電圧が応力に敏感に変化する現象を見出していた。本年度は,この効果の大きさの定量化を行うとともに解析を進めたところ,フラットバンド電圧の変化を支配する因子は固定電荷量の変化であり,界面ダイポール効果の寄与は小さいことが判明した。応力印加だけで固定電荷量が大きく変化する現象は旧来のSiデバイスでは観察されないのに対し,界面に電荷捕獲準位が高密度に存在するSiCでは応力による僅かな電子構造の変化が固定電荷量を大きく左右すると理解された。また本研究では,ダイポール効果を精緻に制御可能な系としてペロブスカイト酸化物のエピタキシャル積層構造を調査してきた。SrTiO3(001)単結晶基板上にSrRuO3をエピタキシャル成長させ,その上にLaAlO3膜を積層するとき,LaAlO3はc軸方向に(LaO)+原子面と(AlO2)-原子面を繰り返すため,その積層順序に応じたダイポール層を形成する。通常はSrRuO3最表面原子層は面内で不均一な分布を有し,ダイポール効果も面内で不均一となるが,積層方法の工夫で原子層の面内均一性を高めることでダイポール効果が変調された。水平力顕微鏡(LFM)で表面摩擦力を調べると,面内での摩擦力の分布とダイポール効果の大小に強い相関がみられたことは,両者ともLaAlO3中の原子層の積層順序の面内ばらつきと対応するためと理解できる。導電性AFMで観察した局所的な電流の面内分布が,LFMで求めた表面原子の分布と整合したため,原子層の積層順序の面内分布の抑制が,積層構造中を流れる電流の制御の上で重要な因子となることが明らかとなった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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