研究課題/領域番号 |
21H04551
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 正和 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90323534)
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研究分担者 |
嶺岸 耕 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (40512992)
山口 信義 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (30910070)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 太陽光水素製造 / 半導体光触媒 / 光起電力 / バンドアラインメント / キャリアダイナミクス |
研究実績の概要 |
再生可能エネルギーの時間・空間的な偏在を克服して主要なエネルギー源とするために不可欠な燃料への転換を低コストで実現し得る技術として期待されている,太陽光からの水素直接製造を担う半導体光触媒について,半導体物理を基軸に学術的知見を蓄積して高効率化指針を構築するための基盤構築を進めた.光励起された電子・正孔の空間分離を行うために表面修飾される助触媒近傍での速度過程を探求するためのモデル系として,モデル半導体であるGaNエピタキシャル結晶表面に,助触媒のモデルとしてオーム性とショットキー性の2種の金属電極を形成し,かつGaNと2種の電極の電位を光触媒としての動作環境で同時計測できる新規構造の開発に成功した. 具体的には,オーム性接触のコンタクト(電子を捕集する電極)としてPt/Ti/GaNを,ショットキー接触のコンタクト(正孔を捕集する電極)としてPt/GaNを,それぞれGaN表面にシャドーマスクを用いた真空蒸着法により櫛形電極構造をとって形成した.蒸着法を採用した理由は,フォトレジストを用いた微細加工プロセスによってGaN表面が汚染され得るが,金属電極形成後では効果的な表面洗浄が困難であると予期したためである. 作製したモデル構造に電解液中で紫外光を照射したところ,水素の発生が確認され,本構造が助触媒を導入して水素発生効率を向上させた半導体光触媒のモデルとして動作することが実証された.なお,同時に発生しているはずの酸素については,現在測定を試みている. 本モデル構造による解析では,光照射・水素発生中に半導体と2種の電極の電位をオペランド測定できることが従来にない利点である.現状では,測定された2つの電極の電位と水素発生・酸素発生の電極電位(酸化還元ポテンシャル)の間に不可解な関係があり,引き続き光照射条件等を変化させて解析を続ける予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光励起された電子・正孔の空間分離を行うために表面修飾される助触媒近傍での速度過程を探求するためのモデル系として,モデル半導体であるGaNエピタキシャル結晶表面に,助触媒のモデルとしてオーム性とショットキー性の2種の金属電極を形成し,かつGaNと2種の電極の電位を光触媒としての動作環境で同時計測できる新規構造の開発に成功した.これは,世界初の成果である. 材料および作製プロセスを検討し,オーム性接触のコンタクト(電子を捕集する電極)としてPt/Ti/GaNを,ショットキー接触のコンタクト(正孔を捕集する電極)としてPt/GaNを,それぞれGaN表面にシャドーマスクを用いた真空蒸着法により櫛形電極構造をとって形成するメソッドを開発できたこと,さらに半導体と2種の電極の電位を光照射・水素発生中に同時計測する解析手法を構築できたことで,今後の様々な解析が可能になった.
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今後の研究の推進方策 |
現状では,測定された2つの電極の電位と水素発生・酸素発生の電極電位(酸化還元ポテンシャル)の間に不可解な関係があり,引き続き光照射条件等を変化させて解析を続ける予定である. また,結晶欠陥が劇的に少ないGaN単結晶基板に対して同様な構造を形成して,結晶欠陥が光触媒の特性に及ぼす影響も精査する予定である.
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