研究課題/領域番号 |
21H04554
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小山 二三夫 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30178397)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 半導体レーザ / 面発光レーザ / 光通信 / 光インターコネクト / データセンタ |
研究実績の概要 |
金属開口を用いた結合共振器による単一モード化を実現するとともに,光ファイバとの高効率結合,高信頼性,高出力動作を可能にする単一モード面発光レーザの実現を目指し,1060nm帯面発光レーザウェハの設計・調達,試作素子の製作,およびその発振特性の評価を実施した.金属開口による結合共振器形成のため,上部半導体DBRは数ペアのHalf-cavity構造とし,金属開口形成後に誘電体反射鏡を形成している.金属開口を有する結合共振器面発光レーザは,従来のIntra-contactの面発光レーザとほぼ同様であり,量産技術が適用できる.違いは,金属(電極)開口の大きさであり,酸化開口に対して,1um程度だけ金属開口の大きさを変化させ,横モード制御の効果と帯域拡大の効果を検証した.金属開口面発光レーザでは,金属境界での反射により,結合共振器効果による変調帯域の増大を明らかにした.レート方程式解析では,通常構造の3倍以上の70GH高速特性の可能性を示した.また,試作した金属開口面発光レーザの室温における小信号変調特性では,結合共振器効果により,変調帯域としては2倍の20GHz以上の高速化を実現した.同時に,酸化開口径7umに対してもサイドモード抑圧比30dB以上を実現するなど,高速応答と単一モード動作の両立を達成した.さらには,結合共振器間の結合を強くすることで,高速応答が加速することを見出し,共振波長を短波長化することで,光結合の増大と高速特性が改善され,変調帯域27GHzを得るとともに,40GbpsのNRZ変調波形を得た.さらに,結合強度を増大する新しい共振器構造として,表面回折格子構造を提案し,モデル化とともに安定な単一波長動作と微小共振器形成による低しきい値化の指針を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属開口を用いた結合共振器による単一モード化を実現するとともに,光ファイバとの高効率結合,高信頼性,高出力動作を可能にする単一モード面発光レーザの実現を目指し,以下の成果を得た. 金属開口面発光レーザのモデル化を行い,光帰還項を含むレート方程式解析を行い,高速化と同時に低チャープ特性を明らかにした.複数の共振器が結合した結合共振器モデルを構築し,酸化開口の大きさが8um程度まで拡大しても,単一モード動作が可能であることを示した. 1060nmm帯面発光レーザのエピウェハの設計,素子製作を行い,同時に試作した通常構造に比べて,約2倍の高速性能を確認した.半導体表面を僅かにエッチングで削り発振波長を数nm短波長化することで,横方向光伝搬が増大して,結合共振器の結合量の増大,その結果変調帯域が増大することを見出し,変調帯域として27GHzを得た.同時に,通常多モード動作となる酸化開口径7um程度でも,全電流域でサイドモード抑圧比30dB以上の安定な単一モード動作を両立した.単一モード光ファイバの伝送実験を実施し,プリエンファシスを行うことで,ファイバ長5kmで50Gbpsの高速伝送に成功した. 100Gbps動作を目指し,結合強度を増大する新しい共振器構造として,表面回折格子構造を提案し,モデル化とともに,安定な単一波長動作と微小共振器形成による低しきい値化の指針を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
100Gbps変調を目指し,横方向の結合共振器の結合量をさらに増大する構造の設計と試作を進める.また,更なる高速化を進めるとともに,大信号変調のアイパターン評価,光ファイバ伝送特性の評価を実施する. 2021年度の結果をもとに,結合共振器結合共振器の高速化を進めるために,共振器の結合強度を増大する素子構造の探索を進め,単ーモード光 ファイパ伝送帯域を拡大するための低チ ―プ化の効果を検証する.金属界面で反射を形成するメタル開口共振器構造で,共振波長を面内で制御して結合強度を増大する構造で,構造パラメータと変調帯域の関係を明らかにし, 100GHz以上の変調帯域を可能にする構造探索を進める.同時に, 1ビット辺りの消費電力として,100 fJ /b it以下の極低消費電力動作の可能性を実験的・理論的に検証する. さらに,結合共振器モデルを用いて,単ーモード動作安定性と発光径との関係を明らかにする.具体的には,酸化開口径と電極開口径との非対称構造の検討を行い,低しきい値・高効率動作の条件を明らかにするさらに,2021年度に考案した表面回折格子構造による強結合共振器構造のモード安定性と高速性能の初期試作の検討を行う. 2021年度の結果を受けて,GaInAs/GaAs結合共振器面発光レーザの試作を継続して行い,面発光レーザの構造バラメータを最適化することによって,高温動作領域においても,変調帯域を小信号30GHz以上,大信号NRZ変調で50Gbpsまでの拡大を目指す. 結合共振器面発光レーザの波長チャービングを光ファイパを通過させた場合の小信号応答特性から評価するとともに,1060nm帯単ーモー ド光ファイパの伝送距譲を拡大するための条件を明らかにする.さらに,孤立バルスを伝送する際のバルス圧縮効果を明らかにし,100Gbps伝送時のリンク距譲拡大の指針を得る.
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