研究課題/領域番号 |
21H04559
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮崎 誠一 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70190759)
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研究分担者 |
牧原 克典 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90553561)
大田 晃生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10553620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | Si系量子ドット / スーパーアトム構造 |
研究実績の概要 |
初年度は、これまでに申請者らが独自考案したリモート水素プラズマ(H2-RP)支援金属ナノドットの高密度一括形成技術を活用し、予め形成したFeナノドットへのSiH4照射によりFeシリサイドナノドットの形成を試みた。具体的には、p-Si(100)基板上に形成したSiO2熱酸化膜(膜厚~300nm)に、電子線蒸着により膜厚~1.0nmのFe薄膜を堆積した後、同一チャンバ内にて、外部非加熱でH2-RP処理を行った。引き続き、基板温度をパラメータに、室温、200℃、400℃でpure SiH4照射を行った。 SiO2上に形成した極薄Fe膜のH2-RP照射前後の表面形状像から、Feナノドットの高密度・一括形成が認められ、SiH4を基板温度400℃で照射した場合、ドット面密度に顕著な変化は認められないものの、平均ドット高さが僅かに増加することが分かった。SiH4照射後のナノドットの室温フォトルミネッセンス測定した結果、0.65~0.87eVに明瞭な信号が認められた。これらの結果は、バルクβ-FeSi2のバンドギャップが~0.7 eVであることから、FeナノドットをSiH4照射することでβ-FeSi2ナノドットが形成できており、サイズ効果による離散的なエネルギ準位を反映した発光が顕在化したと解釈できる。また、β-FeSi2ナノドットのPLスペクトルは、3成分(Comp. 1 :~ 0.84eV, Comp. 2 :~0.91eV, Comp. 3 :~0.77eV)で分離することができ、これらの成分は10~220KでのPLスペクトルにおいても同様に認められた。しかしながら、各成分の積分強度の温度依存性をまとめた結果、Comp. 1とComp. 2のエネルギ位置は、同様な温度依存性を示すものの、Comp. 3は温度依存性が極めて弱いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、申請者らが独自考案した金属ナノドットの高密度形成技術およびSiナノドットのシリサイド化反応制御技術を発展・高度化させて、高密度形成したIV族半導体ナノドットと金属との混晶化を制御する手法を確立するとともに、これまで培ってきたSi熱酸化膜上へのGe内核を有するSiナノドット(スーパーアトム構造)の自己組織化形成技術と融合させることで、電子・光・スピンを制御可能にする「ハイブリッドスーパーアトム」を世界に先駆けて創成することを目的としている。初年度では、SiO2上に予め形成したFeナノドットに基板温度400℃でSiH4照射することで、β-FeSi2が高密度・一括形成できることを明らかにしており、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、従来の半導体ナノドットあるいは均質な量子ドットには見られない異なる物性を有するナノ構造の結合による電子状態の融合や新規電子状態が実現可能な「ハイブリッドスーパーアトム」形成プロセスを構築し、これらの特異な電子物性をデバイス特性・機能に直接反映させた少数電子・光子で動作する新原理機能デバイスの開発を目的としている。次年度では、初年度に構築したFeナノドットのシリサイド化プロセスを高度化することで、「ハイブリッドスーパーアトム」を形成し、化学構造および電子状態を電子分光法を用いて定量評価するとともに、孤立量子ドットにはないコア/シェルナノドット系固有の物性・機能を探索する。さらには、Si外殻へIII族あるいはV族不純物元素をデルタドーピングし、コア/シェル間の電位が変化する様子を調べ、シリサイド内核への電荷移動量および二重ヘテロ接合におけるチャージバランス(電荷中性条件)についての知見を得る。これにより、物理寸法制御以外の方法で、電子状態制御するための指針を明らかにし、「ハイブリッドスーパーアトム」における電子注入・放出過程に関わる電子相関メカニズムを解明する。
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