研究課題/領域番号 |
21H04560
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
久志本 真希 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (50779551)
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研究分担者 |
笹岡 千秋 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任教授 (30870381)
五十嵐 信行 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (40771100)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | レーザ / ワイドギャップ半導体 / 深紫外 / 分極 / 閾値 |
研究実績の概要 |
深紫外LDは不純物無添加型分極ドーピングクラッド層の導入によりレーザー発振を実現した。しかし、nsオーダーの短いパルス電流注入での発振にとどまっている。これは従来の窒化物半導体LDと比較して、閾値電流密度が非常に高いためである。そこで本年度は、深紫外LDにおける閾値上昇の要因を検討した。まずLDに含まれる六角形形状の異常成長に着目した。これらの領域を含んだ共振器では閾値電流密度が上昇する。これらの影響を検討するために、光学特性・電気特性・構造解析といった多角的な手法を用いて諸特性の解析を行った。その結果、異常成長領域はLEDモードでは非常に強い発光強度を持つことを示した。CL測定において発光層の発光波長や分布を観測したところ、異常成長の発光波長は長波長化すること、および発光強度は低減することが示された。そこでエミッション顕微鏡・コンダクティブAFMを用いて電気特性評価を行ったところ、異常成長領域への電流集中が観測された。以上のことから異常成長により電流注入不均一が発生し不均一な発光分布が局所的に形成されることや、異常成長領域のバンドギャップが小さいことで共振器内で吸収が発生することにより、閾値電流密度が上昇することが明らかとなった。次にプロセス起因で発生する発光不均一に着目した。これらデバイス作製中の熱処理プロセスで発生し、閾値電流密度を大きく上昇させる。これは応力解放により形成される可能性が高いと考えられたことから、構造解析や抑制可能なデバイス構造やプロセスの検討を実施した。この根本原因の解決は閾値電流密度の上昇を抑制し、高出力化を実現するために必須であることから、来年度も継続して実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である深紫外LD高出力化のためには、まず低閾値で発振可能なLDの作製が必須である。特に従来の窒化物半導体LDと比較して、ワイドバンドギャップであるAlGaNをベースとしたLD構造であることから、重大な課題である。本年度実施した検討により閾値電流密度の上昇の原因を明らかとすることができた。さらに閾値上昇原因の根本解決に向けた構造解析やデバイス検討も進捗している。以上のことから、低閾値化実現へと大きな前進が得られたと考えられ、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今回着目した活性層中の発光不均一形成はAlN基板を用いた高品質なAlGaN結晶である故に明らかになった現象である考えられる。これらの詳細を明らかとすることは、より短波長・長波長の深紫外LDの実現だけでなく、AlGaN系デバイスの設計やプロセス構築において重要な知見となる。そのため、引き続きデバイス構造やプロセス検討によるデバイス実証に加えて、有限要素法を用いた応力解析といった手法を取り入れて詳細を明らかとすることを目指す。またさらなる低閾値化の実現に向けて、構造解析や、光学特性評価装置の構築などを実施して詳細な評価を行っていく予定である。
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