研究課題/領域番号 |
21H04568
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 久 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80326636)
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研究分担者 |
山田 俊郎 北海学園大学, 工学部, 教授 (30335103)
山村 寛 中央大学, 理工学部, 教授 (40515334)
黒田 恭平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50783213)
齋藤 伸吾 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60343018)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | DNAアプタマー |
研究実績の概要 |
Legionella pneumophilaと結合できるDNAアプタマーを選抜した。選抜は、ポリマー増強キャピラリー過渡的等速電気泳動法(PectI)を用いておこなった。PectIでは、微生物の細胞は移動の初期に過渡的等速電気泳動(tITP)の原理に基づき、狭い単一ピークとなる。tITP積層モードが完了した後プロセスはキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)モードに移行し、PectIにおけるピークの分離を行う。分離された単一ピークは、泳動バッファー中に添加されたポリエチレンオキサイド(600,000)(PEO)の効果により、CZEモードの間ずっと維持される。このようにして特異的な結合親和性を有するDNAアプタマーを獲得できる。 今年度は新規のLegionella pneumophila結合DNAアプタマーについて、PectI選抜法によるシングルラウンド選抜と、類似配列群に分けるクラスタリング法とディープラーニングを用いた定量的処理に基づく大規模NGS解析によって選抜することができた。この選抜システムで獲得できたDNAアプタマーの配列は、先行研究における、従来のCell-SELEXで選抜されたDNAアプタマーと比較して低い解離定数および速度定数を持っており、平衡論的、反応速度論的にLegionella pneumophilaと高い結合能を持ったDNAアプタマーを獲得できた。すなわち、先行研究で選抜されたDNAアプタマーよりもLegionella pneumophilaと特異的に結合し、安定した複合体を形成するアプタマーであると考えられ、我々が目標としているバイオセンサーの開発に適したDNAアプタマーを選抜できたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病原体を検出可能なDNAアプタマーを一つ選抜することが当初の予定であったので、研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
①開発済みのセンシング技術で長期水質モニタリングを行う。:センシング技術を使って、既存の浄水システムの地下水と飲料水の水質をモニタリングする。実験は北海道大学構内の井戸(3地点)とA社所有の井戸(10地点)で行う。モニタリングは平日に一日一回、現場で4年間行う。サンプルを各大学に送付し分析する。結果から井戸ごとに特有の水質変動を明らかにする。汚染物質が検出された場合その原因(近隣からの汚染、地震、不法投棄など)を明らかにする。達成目標は専門知識を持たない人が水質を測定し、データをスマートフォンで大学の研究室に送れることとする。 ②新しいセンシング技術を開発する。:病原体用DNAアプタマーを開発する。10の10乗種類程度のDNAを人工的に合成する。検出したい病原体と混合する。病原体と結合したDNAのみ回収する。これをPCRで増幅する。このサイクルを10回程度繰り返し、特定の病原体にのみ結合するDNA(すなわちDNAアプタマー)を選別する。検出感度を高めるためセンシング技術の濃縮法を適用する。達成目標は①濃縮時間30分、分析時間10分、②妨害物質による影響10%以内、③検出限界値1個/mL(濃縮前)、④専門知識を持たない人でも分析できることとする。 ③開発済みおよび新しいセンシング技術をベンチスケールの浄水装置に適用し水質モニタリングを行う:計13地点の井戸の内の3地点にベンチスケールの塩素処理装置とRO膜処理装置を設置し運転する。地下水と飲料水中の各種水質項目を上述のセンシング技術で、マイクロプレートリーダーを用いて一日一回モニタリングする。3年目からは新しいセンシング技術でもモニタリングする。モニタリングは知識を持たない各大学の学生とA社の社員が行う。得られたデータは毎日研究代表者と分担者に送られ、センシング技術開発にフィードバックされる。
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