研究課題/領域番号 |
21H04570
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐野 大輔 東北大学, 工学研究科, 教授 (80550368)
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研究分担者 |
片山 浩之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00302779)
片山 和彦 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (60342903)
北島 正章 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30777967)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 水の消毒 / ウイルス / 消毒耐性メカニズム / 下水処理水 |
研究実績の概要 |
研究2年度である令和4年度においては、世界中で水の消毒に使用されている塩素消毒について、新型コロナウイルスと同じエンベロープウイルスであるPseudomonas syringae phage phai 6(NBRC105899, φ6)、及び非エンベロープウイルスであるマウスノロウイルス(murine norovirus:MNV)の塩素感受性を評価した。φ6に関しては、初期遊離塩素濃度50,100,200 ppmで塩素処理した結果,15分後のLRVはそれぞれ-0.98,-1.98,-3.62となった。この結果をロタウイルスと比較すると,15分後のLRVは同程度であったが、不活化プロファイルが大きく異なり,ロタウイルスでは5分後以降不活化が進行しなくなったのに対し,φ6では15分後以降も不活化が進行した。このことは,φ6集団とロタウイルス集団を構成する変異体のそれぞれ異なった消毒感受性のためであると考えられた。変異体の存在が不活化に与える影響を評価するためには,プラークからの単離により得た遺伝的な均質なφ6集団同士を既知量混ぜ合わせた上で消毒を行うなどの実験が必要と考えられた。MNVに関しては、塩素感受性の評価結果をもとに塩素感受性集団と塩素低感受性集団の2つに分け、フルゲノムを対象とした次世代シーケンス解析を行った。その結果、特定の変異株の存在よりも、集団の遺伝的多様性が塩素感受性に影響を与えていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水中ウイルスの消毒耐性メカニズムを解明することを目的とする本研究では、作業仮説として、「特定の変異遺伝子がウイルス集団の消毒耐性をもたらす」、及び「ウイルス集団の消毒耐性は遺伝的多様性により決定される」の2つを設定し、その検証を試みている。研究2年度である令和4年度においては、この2つの仮説のうち「ウイルス集団の消毒耐性は遺伝的多様性により決定される」について、代表的な胃腸炎ウイルスであるノロウイルスの代替ウイルスであるマウスノロウイルスに対して成立しうることを実験により示すことに成功した。この成果は世界初のものであり、当初想定を上回る成果が得られたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
ノロウイルスに関する上記成果の科学雑誌上での出版を目指すと同時に、新型コロナウイルスと同じエンベロープウイルスであるPseudomonas syringae phage phai 6(NBRC105899, φ6)に関しても上記仮説のうちどちらが成立するかを確認するための実験に引き続き取り組む。ロタウイルスとノロウイルスに関して成立していた「ウイルス集団の消毒耐性は遺伝的多様性により決定される」について、φ6においても成立するかどうかを確認することを試みる。具体的には、令和4年度においてφ6集団の塩素感受性を定量的に評価する方法を確立したので、塩素消毒と培養を繰り返し施した集団と、希釈後に培養することを繰り返した集団を取得し、それぞれの塩素感受性を評価することに取り組む。得られた準備されたウイルス集団の遺伝的多様性を評価するために、NGSによる遺伝子配列解析を行う。
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