研究課題/領域番号 |
21H04571
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小槻 峻司 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 准教授 (90729229)
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研究分担者 |
佐藤 陽祐 北海道大学, 理学研究院, 特任准教授 (10633505)
渡部 哲史 京都大学, 防災研究所, 特定准教授 (20633845)
山田 真史 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD) (50897858)
小林 亮太 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70549237)
岡崎 淳史 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (10790842)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | データ同化 / 機械学習 / 数値気象モデル / 豪雨予測 / データサイエンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで独立して進んできた気象・水文モデル予測とデータ同化・機械学習を統合し、「富岳」時代の高精度・高頻度なリアルタイム豪雨・洪水予測を確立することである。2021年度は下記(a)-(d)の研究を推進した。 (a) 極端気象予測の改善: 雲微物理の不確定要素である雪氷種は、モデル予測の精度を左右する重要な要素であるが、現状では検証データが十分にない。2021年度には雪氷種画像を分類する畳み込み画像識別器CNN開発した。図鑑画像を教師にしたCNNにより、数値モデルで扱う主要な雪氷種分類に成功した。 (b) 水文データ同化による洪水予測の高精度化: 降雨・流出・氾濫一体解析モデルRRIにアンサンブルカルマンフィルタ (EnKF)を実装し、初期値改善によりリアルタイム洪水・浸水予測を高精度化する。2021年度には、雄物川を対象にしたRRI-EnKFのプロトタイプを完成させた。 (c) 衛星ビッグデータを用いた豪雨の高頻度予測: 線状降水帯の発達の鍵となる水蒸気分布“湿舌”の形成を予測するため、時空間的に密な衛星ビッグデータを用いた、湿舌のデータ駆動型予測手法を構築する。2021年度は畳み込み時系列予測モデル Convolutional LSTMの開発を開始しており、単純な画像補完問題 (Moving MNIST)で良好な動作を確認した。 (d) AIダム操作最適化による災害緩和手法の構築:ここでは高速計算可能な洪水予測エミュレータを開発し洪水の高頻度予測を実現する。2021年度は、雄物川流域を対象に、洪水氾濫モデルの長期積分を行い、その入力・出力関係を関連付ける機械学習・エミュレータを開発した。特に、入出力データを情報圧縮したうえでニューラルネットワークによる回帰学習をさせることで、より少ないアンプルデータからのエミュレーティングを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a), (d)の研究計画については、研究提案時の線表通りに進んでいる。各研究項目については、初年度年度から新たに取り組みを開始した課題ばかりであり、本報告書執筆特点においては未だ論文化されていない。(a), (d) については、英語論文が投稿間近であり、2年時以降に具体的な研究成果の論文化を図る。(b), (c) についても、着実に成果の論文化を図る方針である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、下記(a)-(d)の推進となる (a)極端気象予測の改善: 2021年度に開発した雪氷種を分類する畳み込み画像識別器CNN開発を更に高度化する。特に、実カメラ画像の背景場には繊維に起因するノイズが含まれるため、ノイズに対してもロバストな学習器を開発する。そして実カメラ画像に学習済CNNを適用し、現実の雪氷モデルの検証データを整備すると共に、論文化を図る。 (b)水文データ同化による洪水予測の高精度化: 2021年度に開発した、雄物川を対象にしたRRI-EnKFのプロトタイプを高度化する。具体的には、共分散膨張や局所化など、水文モデルに適したデータ同化手法を探索する。 (c)衛星ビッグデータを用いた豪雨の高頻度予測: 再帰的機械学習による気象場の移流推定に焦点を定め、まず扱いやすいレーダー画像を用いて、データ駆動型降水予測手法の構築する。具体的には、畳み込み時系列予測モデル Convolutional LSTMを開発し、実レーダー画像への応用・高度化を進める。特に、学習のコスト関数が問題になることが考えられるため、最適輸送問題を含めたより地球科学に適した方法を探索する。 (d)AIダム操作最適化による災害緩和手法の構築: 2021年度に開発した機械学習・エミュレータを更に高度化し、より少ない学習データで動作するための汎化性能向上に取り組む。
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