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2021 年度 実績報告書

セメント系無機材料のデジタル微細構造場の構築とマルチスケール大規模物質輸送解析

研究課題

研究課題/領域番号 21H04572
研究機関東京大学

研究代表者

石田 哲也  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60312972)

研究分担者 高木 周  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30272371)
市村 強  東京大学, 地震研究所, 教授 (20333833)
高橋 佑弥  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10726805)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2024-03-31
キーワードマルチスケールモデル
研究実績の概要

1.セメント硬化体の微細構造の解明に向けた実験検討
微細構造と拡散係数の同定を行うための実験手法について網羅的な文献調査を行い、実験により得られる結果の適用性および限界について、包括的な検討を行った。その上で長さスケールに基づきセメント硬化体内部の空隙構造を4 つのクラスに分類して整理する概念を提唱した。すなわちクラス1の原子スケール、クラス2のC-S-Hゲルスケール、クラス3の毛細管空隙スケール、およびクラス4のセメント硬化体スケールとした。まずクラス3に着目したFIB-SEMとクラス4の構造に着目したSEMの実験を行い、物質輸送の場となる微細構造画像の取得を行った。従来の閾値法では取得した画像の正確なセグメンテーションが困難であることが判明したため、教師あり機械学習を用いた新しい方法を提案することに成功した。従来広く使用されてきた水銀圧入法などでは、微細構造ネットワークの連結性を正確に考慮できないこと、一方、FIB-SEMは3次元細孔空間における空間的な連結性を捉えることができ、物質輸送解析の入力情報として利用可能なことを示すことに成功した。
2.大規模数値解析を対象とした高速化アルゴリズムの検討
イメージベーストモデリングで用いられるボクセル有限要素法は、ピクセル単位の詳細なイメージをそのまま有限要素モデル構築に用いることでモデル構築に関する課題の解決を試みるが、詳細なイメージにあわせて有限要素を生成するため結果的に大自由度となるという解析コスト上の課題がある。多数のサンプルのイメージデータがあったとしてもこれを有効活用するためにはこの解析コストを軽減する必要がある。2021年度はグリーン関数をニューラルネットで学習し、これを方程式求解時のiterative solverの前処理として用いることでsolverの収束性を改善すること、あわせてGPUでの適切なプログラム実装を行うことで解析時間短縮へ向けた基礎検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マルチスケール空隙場を対象とした物質輸送解析を行う際には、セメント硬化体に特徴的な空隙構造を正確に理解し、連結性や屈曲度といった幾何学的構造を的確にとらえることが必要不可欠である。従来、電子顕微鏡で撮影された画像から、未水和セメント、C-S-Hに代表される水和物ならびに空隙構造を分離することに困難があったが、本研究では、教師あり機械学習を用いた新しい画像セグメンテーション法を提案することにより、精度の高い微細構造解析法を提案できたことは大きな成果である。また、実験的な検討と合わせて、大規模数値解析を実現するための高速化アルゴリズムの開発と検証も順調であり、概ね、当初の計画通り研究が進んでいる。

今後の研究の推進方策

今年度の研究成果に基づき、以下の項目について研究を行っていく。
(1)ナノからマイクロメートルスケールを包含するデジタル微細構造場の構築
実験の測定情報をもとに、nmからマイクロメートルスケールを含むデジタル微細構造場を構築する。申請者が開発を進めているセメントの高精度水和解析モデルによる算定値を入力情報として、数百nm~マイクロメートルスケールの三次元構造についてはHYMOSTRUC(デルフト大で開発され多くの研究実績を有する微細構造解析法)を用いて算定し、X線CT等による測定結果と突き合わせる。また、数百nm以下の部分については、Cryo-EMやFIB-SEMから得られるデータから3Dボクセルモデルを構築して、HYMO STRUCによる出力結果と統合することを試みる。
(2)デジタル微細構造場におけるラティスボルツマン法による物質輸送解析
項目1で作成されるデジタル微細構造場を用いて、ラティスボルツマン法を用いた物質の大規模輸送解析法の構築を行う。フライアッシュ混和の有無など、異なるC-S-Hのモフォロジーに由来する空隙相互の連結性や屈曲度が異なる微細構造場を対象として、圧力勾配下における液状水の浸透現象の相違を数値解析的に確認する。その結果が、既往の研究で指摘されている物質輸送の相違を定量的に説明可能か否かを確認し、説明可能な場合には空隙の連結性や屈曲度を簡易に表現するマクロなパラメータへと落とし込む。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Numerical Simulation of Dimensional Stability of Precast Segments Exposed to Solar Radiation During Yard Storage2022

    • 著者名/発表者名
      Igarashi Go、Ichimiya Mamoru、Ohya Fumito、Ishida Tetsuya
    • 雑誌名

      Journal of Advanced Concrete Technology

      巻: 20 ページ: 200~211

    • DOI

      10.3151/jact.20.200

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Numerical Simulations of Chloride Transport in Concrete Considering Connectivity of Chloride Migration Channels in Unsaturated Pores2021

    • 著者名/発表者名
      Nukushina Tatsuya、Takahashi Yuya、Ishida Tetsuya
    • 雑誌名

      Journal of Advanced Concrete Technology

      巻: 19 ページ: 847~863

    • DOI

      10.3151/jact.19.847

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Experimental investigation of pozzolanic reaction and curing temperature-dependence of low-calcium fly ash in cement system and Ca-Si-Al element distribution of fly ash-blended cement paste2021

    • 著者名/発表者名
      Wang Tiao、Ishida Tetsuya、Gu Rui、Luan Yao
    • 雑誌名

      Construction and Building Materials

      巻: 267 ページ: 121012~121012

    • DOI

      10.1016/j.conbuildmat.2020.121012

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] GPU Porting of Scalable Implicit Solver with Green’s Function-Based Neural Networks by OpenACC2021

    • 著者名/発表者名
      Fujita Kohei、Kikuchi Yuma、Ichimura Tsuyoshi、Hori Muneo、Maddegedara Lalith、Ueda Naonori
    • 雑誌名

      Accelerator Programming Using Directives. WACCPD 2021. Lecture Notes in Computer Science

      巻: 13194 ページ: 73~91

    • DOI

      10.1007/978-3-030-97759-7_4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Development of Expansive Agent Model in a Multi-scale Thermodynamic Framework Based on Hydration and Microstructure Formation2021

    • 著者名/発表者名
      Kolneath Pen, Tetsuya Ishida, Igarashi Go, Yuya Takahashi, Shinya Ito
    • 学会等名
      International RILEM Conference on Early-age and Long-term Cracking in RC Structures
    • 国際学会
  • [学会発表] Effect of Expansive Additives on the Early Age Elastic Modulus Development of Cement Paste by Ambient Response Method (ARM)2021

    • 著者名/発表者名
      Mayank Gupta, Igarashi Go, Jose Granja, Miguel Azenha, Tetsuya Ishida
    • 学会等名
      International RILEM Conference on Early-age and Long-term Cracking in RC Structures
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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