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2022 年度 実績報告書

有用微生物培養DHSリアクタを用いたエコバイオテクノロジーによる新規環境技術開発

研究課題

研究課題/領域番号 21H04576
研究機関広島大学

研究代表者

大橋 晶良  広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (70169035)

研究分担者 金田一 智規  広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (10379901)
青井 議輝  広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (40386636)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2026-03-31
キーワードエコバイオテクノロジー / 環境技術 / 資源回収 / 水処理 / DHSリアクター
研究実績の概要

途上国に適用可能なエアレーションを要さない省エネ型のDHS(Down-flow Hanging Sponge)リアクターの研究を通して,下水処理としての機能だけでなく,新規の環境技術の創生が明らかになってきた。微生物は多種多様でそれぞれ特別の機能を有しており,難分解性排水処理等への適用も可能である。しかし実用化には,如何にしてある特別の機能を有している細菌をバイオリアクター内に優占的に集積培養し,高濃度に保持することができるか,が課題である。
本研究では,微生物の混入を防げない自然開放系の処理システムにおいて,優占的に細菌を培養する技術・エコバイオテクノロジーを利用し,新規の微生物の機能・特性を明らかにすることで,実用化・実装化の可能性が高い環境技術:1.難分解性排水処理,2.新規窒素処理プロセスの開発,3.排水等からの資源回収,4.温室効果ガスの分解による放散防止,5.途上国の普及に資するDHSバイオリアクターの改善,の5つの新規環境技術に特化し研究開発を行うことを目的としている。
2022年度は主にその内の3つ,極低濃度メタンガスの分解,新規窒素処理プロセスの開発,メタンからの生分解性プラスチック原料PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)の生成・回収について実施した。その結果,次のような研究成果を得た。新規のメタン酸化細菌の集積に成功した。しかし,コロニー形成による分離培養を試みているが,まだ分離すには至っていない。海水においても新規窒素サイクルによる窒素排水処理が可能であることを明らかにした。PHA含有量を高める培養条件を明らかにし,高PHA含有メタン酸化細菌を特定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.極低濃度メタンガスの分解:大気中のメタンを利用して増殖する微生物の知見は乏しい。しかし,これまでの研究においてpH3という強酸性下の条件で,メタン濃度5ppmでも増殖するメタン酸化細菌の生存を確認している。そこで,本研究では分離培養を実施すると共に,極低濃度メタンガスを分解除去するDHSリアクターの運転方法を検討した。その結果,新規のメタン酸化細菌の集積に成功し,コロニー形成による分離培養を試みているが,まだ分離するまでには至っていない。
2.新たな窒素サイクルを利用した新規窒素処理プロセスの開発:既存の窒素排水処理は,硝化細菌と脱窒細菌によって処理が行われている。しかし,新規の窒素サイクルがありそうで,淡水での新規窒素サイクルによる窒素排水処理が可能であることを明らかにしており,そこで令和4年度では,海水でも新規窒素サイクルがあるかどうかを調査した。その結果,新規窒素サイクルによる窒素処理が可能である結果を得た。しかし,処理が不安定であり,その原因を明らかにする課題が残された。
3.メタンからの生分解性プラスチック原料PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)の生成・回収:下水処理場から発生するバイオガス(主成分はメタン)を利用してPHAを生成することができる。メタンを酸化する細菌(メタン酸化細菌)は2種類(Type IとII)に大別され,その内のType IIのメタン酸化細菌がPHAを生成すると報告されている。そこで本研究では,Type II(特に高PHA含有率の種)を集積培養する至適な条件(pH,メタン濃度など),PHA含有量を高める培養条件(無機塩濃度など),メタン酸化細菌の機能・生態を調査した。その結果,高PHA含有Type II細菌にとって快適な環境はpH4であり,そのメタン酸化細菌を特定した。

今後の研究の推進方策

令和5年度は3つの技術開発を実施する。
1.難分解性排水処理:マンガン酸化物が染料を分解し,生成された分解物が生物学的作用によってさらに分解されることを明らかにした。しかしながら,マンガン酸化物による染料の分解では,染料の分子量よりも大きな生成物も生成されていて,これらの副産物を生物学的に分解することはできなかった。この解決策として,オゾンとの併用により染料を分解すれば,高分子の副産物の生成を抑制できると推測される。そこでDHSリアクターによる分解実験により検証する。
2.温室効果ガスの分解による放散防止:,高アンモニア環境下では,従来のメタン酸化細菌に属さないメタン酸化細菌が存在することが分かった。微生物群集解析により,既往のメタン酸化細菌とは門レベルで異なるActinobacteria門のMicobacterium属に属する新種であることが推測された。そこで新種のメタン酸化細菌の分離・培養を実施し,高アンモニア環境下で生存することの機構について調査する。
3.新たな窒素サイクルを利用した新規窒素処理プロセスの開発:既存の窒素排水処理とは異なる新規の窒素サイクルがありそうで,これまでの研究において,淡水および海水においても新規窒素サイクルがあることを示す結果を得た。すなわち,嫌気性環境下で硝化反応が,好気性環境下で脱窒反応が起きる現象である。しかしながら,新規の反応は不安定であり,再現性に欠ける。この原因として絶対嫌気ではなく,微好気環境が影響していると推測された。そこで,これを検証するためDHSリアクターを用いた連続アンモニア処理実験を実施し,微生物群集解析より究明する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] New microbial electrosynthesis system for methane production from carbon2023

    • 著者名/発表者名
      Hiromi Kambara, Ha Thi Thu Dinh, Shuji Matsushita, Yoshiteru Aoi, Tomonori Kindaichi, Noriatsu Ozaki, Akiyoshi Ohashi
    • 雑誌名

      Journal of Environmental Sciences

      巻: 125 ページ: 786-797

    • DOI

      10.1016/j.jes.2022.02.029

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 微好気環境におけるMnO2を利用したメタン酸化反応2023

    • 著者名/発表者名
      元川 大輔, 蒲原 宏実, 大橋 晶良, 金田一 智規
    • 学会等名
      第57回日本水環境学会年会
  • [学会発表] Mn酸化物を用いた新規窒素除去プロセス2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤 有希, 大橋 晶良, 蒲原 宏実
    • 学会等名
      第57回日本水環境学会年会
  • [学会発表] Crucial environmental conditions governing the community of methane-oxidizing bacteria2022

    • 著者名/発表者名
      Hiromi Kambara, Takahiro Shinno, Norihisa Matsuura, Shuji Matsushita, Yoshiteru Aoi, Tomonori Kindaichi, Noriatsu Ozaki, Akiyoshi Ohashi
    • 学会等名
      18th International Symposium on Microbial Ecology
    • 国際学会
  • [学会発表] メタン酸化細菌コミュニティーを決定する環境因子2022

    • 著者名/発表者名
      蒲原 宏実, 松下 修司, 金田一 智規, 尾崎 則篤, 大橋 晶良
    • 学会等名
      日本微生物生態学会第35回大会
  • [学会発表] DHSリアクターを用いたエコバイオテクノロジー2022

    • 著者名/発表者名
      大橋 晶良, 金田一 智規, 蒲原 宏実
    • 学会等名
      第25回日本水環境学会シンポジウム

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公開日: 2023-12-25  

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