研究課題/領域番号 |
21H04586
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大林 茂 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (80183028)
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研究分担者 |
焼野 藍子 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (30634331)
野々村 拓 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60547967)
奥泉 寛之 東北大学, 流体科学研究所, 技術専門職員 (60647957)
永井 大樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70360724)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | デジタルツイン / 風洞実験 / データ同化 / 粒子画像流速計測法 / 感圧塗料計測法 |
研究実績の概要 |
航空機や流体機械の性能評価方法は主に二種類である.一つは,風洞実験である.風洞実験の利点は,実際の飛行状態を模した流れ場を用いて流れの剥離や乱流遷移といった複雑な流動現象を再現できることである.一方で,取得可能なデータに物理的制約があること,模型を風洞内で保持するための支持装置により流れが変化すること (支持干渉) といった欠点が存在する.また,模型製作や風洞の運用コストの高さや,実験期間の長さも大きな欠点である. もう一つは,近年の計算機性能向上に伴い利用され始めた「数値シミュレーション」である.流れのシミュレーション手法は,乱流をモデルで表現するか,流れ場を離散化する格子を細かく設定し流体運動の支配方程式を直接計算するかによって大別される.数値シミュレーションでは計算領域内の全格子に流れ場の物理量が保存されるため,時空間的に非常に多くのデータが得られるという利点がある.しかし,計算精度の高さと計算コストの高さは相関関係にあり,現在航空機の開発をはじめとする工業分野で製品開発など実用的なシミュレーションに使用されるのは計算コストが低いが高い精度は期待できない 乱流モデルを用いたシミュレーションである. 実現象に忠実であるが取得可能なデータに限りがある風洞実験と,実現象の再現性は低いが大量のデータを取得可能な乱流モデルを用いたシミュレーションを融合させることで,両者の利点を活かし,欠点を補いあう理想的な流れ場の評価手法「風洞実験デジタルツイン」を実現できると考えられる. 本研究では,これを実現させる手法として,データ同化という計測値を用いて数値シミュレーションを統計的に修正する手法を採用し,三次元の流れ場について風洞実験の PIV 計測 によって得られた流れ場の速度分布を計測値として用いたデータ同化による乱流モデルパラメータの最適化を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,風洞実験と数値シミュレーションの融合による「風洞実験デジタルツイン」構築に向けたより実践的な一例として,PIV データを用いたデータ同化による三次元円柱周りの数値シミュレーションの予測精度向上を実施した. 大規模剥離を伴う円柱周りの三次元流れについて,円柱後流の PIV 計測データを用いたデータ同化による乱流モデルパラメータの最適化によって,デフォルトのパラメータを用いた数値シミュレーションでは範囲が小さく計算されていた円柱後流の流れ場の再循環領域の大きさが,より大きくなり,数値シミュレーション結果がより高精度になることを示した.これは,推定されたパラメータの値がデフォルトの値よりも小さいため,流れ場の乱流粘性係数が低下したことに起因する.流れ場の乱流粘性が低下することで,再循環領域における流れのせん断応力も低下することにつながる.その結果,デフォルトのパラメータの場合であれば主流に従って流れが下流方向に向かう円柱から離れた領域においても再循環領域が残るようになり,推定されたパラメータの方が再循環領域が下流側に大きく広がると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,PIV データを用いた三次元流れの時間平均場に関する乱流モデルのパラメータ最適化を実施した.PIV データの特徴として,時間分解能が高く,乱流の非定常構造の断面を忠実に可視化できるという点がある.そこで,今回行った定常計算による流れ場のデータ同化から発展させ,データ同化を用いた非定常シミュレーションの精度改善を行いたい.実験結果によると,本研究で計算対象とした円柱周りの流れ場には,円柱後流にらせん渦構造という周期的な時間変動を伴う乱流構造が存在する.PIV データと非定常な数値シミュレーションを用いたデータ同化によってこのような乱流構造の時間変化も忠実に再現可能となるより先進的な「風洞実験デジタルツイン」の構築を行いたい. そのために、Detached Eddy Simulation (DES) を導入する.Large Eddy Simulation (LES)は流れ場の非定常性を再現できるなど優れた乱流モデルの一つだが,解析コストはかなり大きく現実的には実施できない場合も多い.そこで解析コストの低い乱流モデルとLESを組み合わせたハイブリッドモデルとして考案されたのがDESである.DESでは壁近傍の小さい渦は乱流モデルによって平均的な場として計算し,壁から離れた渦が大きい領域はLESによって計算する.この手法にデータ同化を組み合わせることで,非定常の風洞実験デジタルツインの実現を目指す.
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