研究課題/領域番号 |
21H04589
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐宗 章弘 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40215752)
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研究分担者 |
中村 友祐 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (10847685)
北村 圭一 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20402547)
長田 孝二 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50274501)
太田 匡則 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60436342)
市原 大輔 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80815803)
杵淵 紀世志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90648502)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 衝撃波 / ソニックブーム / 衝撃波管 / 圧縮性流体力学 / リーマン問題 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、圧縮性流体力学の原理を利用して、前方速度場誘起による衝撃波背後圧力上昇の抜本的緩和を実証し、具体的な応用方法を見出すことを目指している。実験方法として、矩形断面を持つ「流動衝撃波管」を開発して誘起流れと衝撃波の干渉を可視化診断するとともに、自由空間における衝撃波と流れの干渉によって、より大規模な場での挙動を調べる。さらにそのための光学可視化診断法、数値実験法を開発して、適用することを目指している。令和3年度は、流動衝撃波管を完成させ、定常流れとの干渉実験を行ったが、前方流れ導入口部で衝撃波の回折、反射が起こり、想定した干渉状態を実現するための課題が残った。また、中規模実験の衝撃波面三次元定量可視化の為、多方向同時計測システムの構築を行った。これによりφ100mm、流れ方向210mmの計測領域を実現した。衝撃波管開口端部から放出された初期衝撃波マッハ数1.2の衝撃波に誘起された流れ場の計測実験を行い、衝撃波面の計測が可能であることを確認した。また別途新設された風洞の基本特性を評価して、衝撃波乱流干渉実験環境を構築した。乱流との干渉による衝撃波過剰圧変動に関して既往研究とよく一致する結果が得られた。数値計算において乱流との干渉により変形した衝撃波面の局所形状と衝撃波マッハ数に関する解析を行った結果、両者に相関があることがわかった。本研究のターゲットとなる非常に弱い衝撃波(マッハ1.01)の数値計算において、従来の有限体積法による圧縮性流体解法では衝撃波が拡散してしまう等の問題が起こる事を明らかにした。またこの課題に対し、計算手法の適切な選定により対応可能である事を2次元の数値実験で示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた、基盤実験装置、数値実験手法が構築できたため。
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今後の研究の推進方策 |
当面の研究計画は、以下の通り。流動衝撃波管および自由空間における衝撃波変調実験とそれらの数値実験を介して、前方流動場nudgeによる衝撃波面消失原理の実証と、マジックフェンスの圧力変調効果を検証する。流動衝撃波管実験では、定常流形成に加えて非定常噴流の効果を実験検証する。その際、衝撃波伝播と非定常噴流の同期は、既存の対向衝撃波管の隔膜破断制御システムを活用する。マジックフェンスについては、衝撃波管内に2次元モデルを設置し、高速度カメラによる光学可視化診断を行う。その際、当研究グループで開発したスペックルBOS法を活用し、奥行き方向の密度分布に関する情報も取得する。屋内自由空間における実験では、多方向同時計測システムは吹出し風洞から生成される格子乱流にさらされる。その為、まず屋内自由空間での実験において亜音速流にさらされた計測システムの特性調査を行う。その後、衝撃波発生装置から生成される流れ場を計測し、衝撃波変調~波面消失を伴う流れ場に対して計測感度の調整を行う。衝撃波面の光学可視化診断については、初年度に構築した実験系において様々な条件下で衝撃波乱流干渉実験を行い、追い風や速度乱れが衝撃波に及ぼす影響を調査する。特に弱い衝撃波の可視化に対する感度を評価し、自由空間における可視化実験の実施につなげる。数値実験に関しては、実際の流れに近い3次元に拡張し確認する。また衝撃波拡散の本質的な解決策として、流体の擾乱成分のみを扱う「線形オイラー方程式(Linearized Euler Equation)」の数値解法を検討する。物理的、数値実験の結果を突き合わせて、流体力学的考察を深める。以上の成果を総合することによって、衝撃波圧力変調に関する原理実証の目途をつけて、マジックフェンスを起点とする応用展開の足掛かりを構築する。以上の研究を進め、その結果を検証してさらに先のステップに進める。
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