研究課題/領域番号 |
21H04591
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
宮崎 康行 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (30256812)
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研究分担者 |
奥山 圭一 日本大学, 理工学部, 教授 (30442461)
佐藤 泰貴 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (70726760)
有田 祥子 静岡大学, 工学部, 助教 (50800629)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | ゴッサマー構造 / 宇宙構造物システム / 展開構造 / 高精度構造 |
研究実績の概要 |
研究計画に沿って,以下の通り実施し,成果を得た. 【内容1:理論構築,解析コード開発】高剛性なCFRP製凸型断面ブームの設計理論と自己伸展ブームの伸展理論を構築し,現有の解析コードに組み込んだ.また,膜面展開形状予測の誤差の力学モデルとして,折り癖による展開後の残留変形の高精度予測法を構築した.歪のシフトファクタを考慮した粘弾塑性モデルにより,有限要素解析による形状予測の精度を向上させた. 【内容2:実構造物への理論の適用,高精度化・高安定化】超軽量で高精度・高剛性なブーム伸展機構を提案した.これに併せて,半断面に分割した状態で収納されたCFRPブームを伸展途中で結合させることで,伸展後の閉断面を実現し,高剛性化・高精度化を図った.また,膜構造のハーネスレス化による高精度化に向けて,薄膜印刷回路(FPC)の変形や断線の測定システムを構築し,膜の折り畳みの曲げ半径と膜厚を計測し,良好な計測結果を得た.また,次年度に向けて,FPCの様々な印刷方法および導線材料を調査した.さらに,膜やブームの保持解放方法を提案し,試作した自己展開膜面トラス(SDMT)でその妥当性を確認した.併せて,誤差要因が構造システム全体の形状精度・形状安定度に与える感度の解析コード開発に着手した.そして,成果は現在検討されている超小型ソーラーセイルおよび超小型衛星用磁力計ブームに適用することとなった. 【内容3:要求と構造様式との関係の明示】 本研究が目指す,10~数十m級で,形状精度がサブmm程度,質量面積比が0.4kg/m2以下程度の面構造の実現に向けて,まず,SDMTの簡素で高精度なラッチ方法を提案し,試作モデルでその妥当性を確認した.また,材料の軽量・高剛性化に向けて,3Dプリンタで成型したCFRTPの熱機械特性を取得した.その結果,比強度,比剛性(比弾性),耐熱性がCFRP相当であることを確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画どおりに研究を遂行できたことに加えて, ①現在,東工大とJAXAで検討中の超小型ソーラーセイルミッションに,本研究の成果の一部を適用することとなり,研究代表者をリーダーとする研究チームを組織できたこと ②現在,JAXAが進めている超小型探査機ミッションに搭載する磁力計用伸展ブームについて,それまで検討していたブームに代えて,本研究で検討してきた双安定性をもつ凸型断面CFRPブームが第一候補として採用されることになったこと というように,本研究の成果が実機に適用される可能性が高くなったことが理由として挙げられる.また, ③CFRTPの耐環境性を確認できたことで,次年度以降,これをベースに,宇宙仕様の構造部品の開発ができるようになったこと も挙げられる.言い換えれば,本研究の最終的な狙いである,学術研究を実機開発に適用できる程度まで緻密化・汎用化することが,研究1年目にしてできてきたことが,「当初の計画以上に進展している」と判断した理由である.
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今後の研究の推進方策 |
まず,研究全体については,今後も予定通り進めていく.特に,次年度は,今年度に構築した実験系を用いて,本研究で構築している理論を検証することに注力していく.これにより,研究成果を前倒しで出して,論文発表等,成果の公表に力を入れていく. 個々の研究内容については,特に以下の2つを加速していく. 【内容2:実構造物への理論の適用,高精度化・高安定化】実験結果のフィードバックにより,感度解析コードを早急に完成・改良する. 【内容3:要求と構造様式との関係の明示】本年度の検討により,SDMTの他に,双安定ブームを用いたトラスの可能性を見出すことができたので,次年度以降はこの2つの構造様式の検討を深化させる. また,今後も,今年度と同様,研究成果を実ミッションに適用することを模索していく.そして,そこで得られた知見や課題を本研究にフィードバックし,本研究で構築する解析・設計理論を効率的かつ短時間にブラッシュアップしていく.
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