研究課題/領域番号 |
21H04598
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉田 真宏 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70624592)
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研究分担者 |
趙 晃済 京都大学, 医学研究科, 講師 (00706707)
小島 紘太郎 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (10822786)
杉山 治 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40586038)
藤田 皓平 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40648713)
大鶴 繁 京都大学, 医学研究科, 教授 (60437225)
金尾 伊織 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (80372564)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 医療施設 / 広域災害 / 事業継続性 / 非構造部材 |
研究実績の概要 |
特定診療行為の構造要素・非構造要素・重要機器・設備を特定し、連関図を構築している。新生児集中治療室を対象に、図式でモデルの要素間因果関係を記すシステムダイナミクス理論を用いた連関図の案を作成した。各要素の地震脆弱性に関するデータを収集し、対数正規分布に基づく被害率関数を構築した。治療室のマネジメントを分析し、診療行為に必要な人員ならびに地震時に参集可能な人員をモデル化した。地震後の利用可能な病床数の時系列変化を出力することに成功した。ただし、データが不足している要素については、仮のモデルデータを利用している。 医療施設の地震等の災害発生に伴う建物の構造安全性や機能性の低下を評価するため、京都市内で想定される地震動データを利用し、入力地震動のばらつきが建物の損傷に与える影響を簡易な方法で検討する手法を提案した。入力地震動を2つのインパルス列からなるダブルインパルス入力に置き換え、入力の振幅とインパルスの入力間隔が建物の最大塑性率に及ぼす影響を評価した。様々な振幅とインパルス間隔を持つダブルインパルス入力に対して 1 質点弾塑性系の最大塑性率を評価することで、想定地震動に対して入力のばらつきが最大塑性率に及ぼす影響を明らかにした。 災害時重要施設の事業継続性を確保するために、非構造部材に関しても耐震性能評価手法の確立が不可欠である。2021年度は、屋上の給水設備の地震被害を明らかにし、地震被害の予測に必要なデータを収集するため、置き配管試験体の振動台実験を実施し、損傷状況や加速度応答・変位応答のデータを収集した。配管の損傷軽減の目的で用いられるフレキシブル配管は、加速度、変位応答ともに直配管に比べて大きく、置き架台の高さが配管の損傷に影響を与えることを示した。また、並行して配管の繰り返し曲げ実験を実施して、径と材質の異なる配管の耐力と変形性能を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特定の診療科について、構造要素・非構造要素・重要機器・設備を特定し、連関図のプロトタイプを構築できた。 地域医療のクリフエッジをシミュレーションするプラットフォームの基礎として、地域を対象に入力地震動のばらつきを考慮する手法を提案できた。 振動台実験では、事前解析を行った知見に基づいて実験計画を行い、再現が難しい配管の損傷現象を実際に再現することができた。、配管の繰り返し曲げ実験より、管径の異なる配管は異なる破断メカニズムを有することを確認した。 これらの成果により、今後検討すべき内容の基礎を固め、2022年度の研究につながる基礎検討ができたため、2021年度の研究目標は概ね達成したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
連関図については、構築したモデルに不足しているデータの収集する。工学的な情報が入手できない要素については、医療関係者を集めたワークショップなどを開催し、専門家の合意を得た疑似データを作成する。各診療行為の特徴を基にグルーピングを進めて、診療行為のArchtypeを整理し、特徴を反映した連関図の作成を進める。 クリフエッジをシミュレーションするプラットフォームについては、建物内部の被害に対する地震動のばらつきの影響を解析する仕組みを構築する。また、地震規模自体をばらつかせて、地域の被害を増分解析する手法を考案する。 非構造部材については、①解析モデルの確立とその検証、②置き配管の損傷条件の実験的確認、③配管の要素実験による破断メカニズムの確認を行った。2022年度は、2021年に妥当性を検証した解析モデルを用いて、配管の損傷に影響を与える因子について抽出し、その影響度を数値化することを目的とする。具体的には、以下の手順で進める。①屋上配管の調査を行い、配管の損傷に繋がる因子を抽出する、②数値解析によって、抽出した因子がどの程度損傷に寄与するのかを検討する、③その影響度を数値化することを目指す。また、並行して、吊り配管についても同様の検討を進める予定である。
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