研究実績の概要 |
電気抵抗率が10μΩ㎝以下の化合物としてNiAl,Cu2Mg,CuAl2を選択し、第一原理法によって電子の平均自由行程を計算し、現行配線材料のCuより小さい値となることを確認した。また、これらの化合物を配線形状にしたときの電気抵抗率を計算し、線幅が約7nm以下の場合にライナーとバリア層を有するCu配線の実効抵抗率より低くなることを示した。これらの計算結果を実験で検証した。まず、NiAlは融点が高いために成膜ままの電気抵抗が高く、バルク値にするには500℃以上の温度での熱処理が必要であった。Cu2MgはMgがSiO2と反応して連続的にMgOが成長するため、高温での利用が不可能であることが判明した。CuAl2が抵抗率、細線形成、界面組織安定性において優れており、高温高電界強度印加条件下での信頼性試験(BTS)と絶縁層破壊経時変化試験(TDDB)を行った。いずれの試験においても従来のCu配線より優れた信頼性を示した。さらに、CuAl2は安定して存在する組成範囲が非常に狭いため、化学量論組成からずれたサンプルを作製し、電気抵抗率と信頼性に関する組成依存性を調査した。その結果、組成ずれが±5at.%の範囲では電気抵抗率の変化が小さく、10μΩ㎝以下を維持できた。BTS試験とTDDB試験においても組成ずれに起因する課題は見られなかった。TDDB試験に関しては、電界強度依存性を調べることで、絶縁層破壊のメカニズムを明らかにした。CuAl2とSiO2との限定された界面反応によって厚さが2nm以下のAl酸化物が形成されるが、この絶縁層の破壊が全体の破壊を決めていることが明らかになった。
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