研究課題/領域番号 |
21H04605
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小池 淳一 東北大学, 工学研究科, 教授 (10261588)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 半導体デバイス / 多層配線 / 金属間化合物 / バリア層 / 信頼性 |
研究実績の概要 |
これまで研究対象としてきた金属間化合物は、室温におけるバルク電気抵抗率が10microOhm-cm以下のものを公開情報から探索したものであるが、数百種類以上あると言われる金属間化合物において電気抵抗率が報告されているものは極めて少なく、これまでに研究対象とした材料だけでは充分とは言えない。近年4800種の化合物の抵抗率を第一原理法で計算したデータベースが報告された。これを利用することで、真に性能に優れた低抵抗率の化合物候補を絞りこむことが可能となった。このような背景をもとに、これまでの研究内容と合わせてH5年度に実施した内容および成果は次のようである。(1)Cu2Mgにおいて、SiO2との反応を防止する界面層を見出す。(2)Cu2Mgの膜厚減少に伴う抵抗上昇が緩やかである原因を解明する。(3)抵抗率のデータベースからLSI配線に要求される項目を用いて配線候補材料をリストアップし、それらの電気抵抗率の膜厚依存性を調査する。 得られた結果を以下に説明する。(1)酸化物形成傾向がMgOより安定な酸化物を選択し、界面反応の有無を調べたところ、Y2O3が最適であることが判明した。あらゆる金属酸化物のうち、Sc酸化物に次いで安定であり、Scより安価で大気中で安定である。Y2O3を金属間化合物と純金属の銅代替候補材料として用いたところ、Y2O3と配線との界面において電子がSpecular散乱をするため、抵抗率が低減できることが判明した。(2)Cu2Mgの結晶方位分布と結晶粒界タイプを調べたところ、全粒界の30%以上が双晶界面であることが判明し、これがCu2Mgの抵抗上昇が緩やかな原因であった。(3)理論的にも実験的にもCuAl2が最適であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究を開始した時点の計画では、少数の公開情報から選択した金属間化合物に関して研究を実施することになっていたが、最近発表された化合物の電気抵抗率データベースを利用することが可能となり、一定の条件でスクリーニングすることで数十種類に絞り込んだ化合物を実験対象とすることができた。このことから、当初計画以上に精度を高めた材料探索が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
Cu2Mgは双晶形成傾向が強い立方晶Laves相であり、このように双晶が形成される場合とされない場合において抵抗率の膜厚依存性がどのように変化するかを調べ、双晶界面による電子散乱の効果を明らかにする。データベース中から新規化合物を探索する過程で、Cu5RE(REは希土類元素)の金属間化合物が従来のCu-Mn合金より安定な自己形成バリア層となる可能性があることが判明した。当初計画に加えてCu5REによる自己形成バリア層の特徴を新たに調査する。
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