研究実績の概要 |
前年度は、Feの先端にNiメッキを施し、固相拡散を通じてFe-Ni拡散対を作製した後、Mgと突き合わせてホットプレスを行うといった手法を用いた。本年度は、FeとMgの間にNi濃度の異なるFe100-xNix(x=20, 30, 40, 50, 60, 70)合金層を挿入し、まずFeとFe-Ni層を固相拡散させた後、Mgとの金属浴脱成分反応を通じた接合を試みた。FeとFe-Niの固相拡散により接合界面においてNi組成が連続的に変化し、約40 μm程度の厚さを持つ拡散相が形成されていることが確認された。各試料をMgと接合したところ、x=20の試料においては反応層が形成されておらず、金属溶湯脱成分反応が進行しなかった一方で、x=30-70の試料において、α-Feと(Mg-Mg2Ni)の共連続組織が確認され、接合界面において当反応が生じていることが確認された。X=30, 40, 50の試料においてはそれらが連続的に絡み合った理想的な共連続組織が見られたのに対し、x=60, 70の試料では反応層側に占めるα-Feの体積分率が減少し、リガメントが孤立している様子が伺えた。また、Ni量の増加に伴ってもろいMg2Niの析出量が増えることが観察された。引張り試験より、x=20ならびにx=60, 70の試料においては十分な接合強度が得られなかったが、理想的な共連続組織が見られたx=30, 40, 50の試料において、100 MPa程度の強固な接合が達成され、いずれもMg側の母材破断が生じた。 本研究において、室温で互いに相分離するMgとFeを十分な強度で接合することに成功した。これまでその接合が困難であると考えられてきた元素間において当技術を通じた接合の可能性が示され、本接合技術の幅広い展開が今後大いに期待される。
|