研究課題/領域番号 |
21H04616
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武藤 俊介 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (20209985)
|
研究分担者 |
大塚 真弘 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 講師 (60646529)
齊藤 元貴 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00749278)
志賀 元紀 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20437263)
岡島 敏浩 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部), あいちシンクロトロン光センター, 副所長 (20450950)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
キーワード | ナノ材料物性 / 複合電子分光 / インフォマティクス |
研究実績の概要 |
1.L10型FePt合金ナノ粒子は高い磁気異方性と保持力を持つ磁気記録媒体としての応用が期待されている。本材料の磁気特性はナノ構造や熱処理によって変化し,高い空間分解能での磁気特性とミクロ磁気物性との相関を明らかにすることが重要である。Fe及びPtの隣接スピンの相対的な関係を明らかにするために,ナノビームによるTEM-EELSを用いてFe-M2,3,Pt-O2,3,Pt-N6,7 及びFe-L2,3吸収端スペクトルに古典的電子磁気円二色性(EMCD)法を適用した。 2.当グループではビームロッキング法によるサイト選択的な不純物・ドーパント・点欠陥などの定量的状態分析法の開発応用を進めている。本手法の詳細な実施手順プロトコルをビデオ付きで公開した。またこれまでSTEMレンズ系の収差のために分析領域が1ミクロン以上までに限定されていた欠点を克服するために,現在電子顕微鏡分野の共通の分析プラットフォームであるGatan Microscopy Suite (GMS)のプラグインとして動作するビーム制御ソフトウェアQEDの拡張を行い,分析領域を最小30 nmにまで縮小することに成功した。 3.本研究では短時間のナノビーム走査でデータ収集し,EXAFS/EXELFS法によって得られる物理量の一つであるDebye-Waller因子をナノ分解能でマッピングして結晶/非晶質(ガラス)の空間分布を可視化することを目的とした。そのためにEXELFS振動(干渉関数)の強い吸収端近傍のスペクトルにスパースモデリングの一つであるLASSO正則化による回帰分析を適用してEXAFS基本公式から特定の元素周囲の部分動径関数を導出することを試みた。 3.愛知SRセンターとの連携によって前年度、TEMとSR施設での共通試料測定のための試料大気非曝露搬送システムを構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のために共同研究者の外出が制限される中、共同実験、及びオンサイトでの打ち合わせが滞り、やむを得ず十分な環境構築ができない部分があった。また同じ理由及び半導体関連部品の調達が全国的に遅れていたために、設備導入および装置の更新・修理が予定年度内に進まない弊害が出ており、このことが経費繰り越しの直接の原因であった。 しかしながら、この機会に理論的な検討や、新たな解析コード開発は進み、全体としては順調に進捗していると考えている。特に電子エネルギー損失カイラル二色性を利用したFePt合金ナノ構造におけるスピン構造の測定に成功している(論文準備中)。またあいちSRとの連携によって電子顕微分光と放射光分光を組み合わせるマルチモーダル計測も進捗しつつある。本年度は前年度に作製した共通試料搬送システムを使って、試料を大気非曝露でTEM施設とSR施設間を搬送し、同じ試料の同じ場所をTEM/SRで測定する試みに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.ビームロッキング(BR)モードの高効率化:サンプリング方法にデータ科学を適用し、これまでに比べ、測定時間を二桁程度短くする。 2.BR法と連動させた可視光発光(カソードルミネッセンス:CL)において、格子振動の異方性に由来する信号強度変調が既に観察されている。これについて理論解析を進め、この仮説を証明する。 3.TEM/SEMとSR光を使った時間・空間スケールを広くカバーするエネルギー領域,異なる機動性などにおいて相互乗り入れ(同じ試料のマクロ計測による,電子照射の影響の検証/抽出)を推進する。 4.前年度にBRモードX線分光及び原子分解能STEM像の組み合わせで非対称なセラミックス結晶粒界の構造解析を行い、粒界偏析する希土類元素の位置決定への道をつけることに成功した.本年度は更にいくつかの一般粒界の構造解析を行い、現実のセラミックス粒界における機能元素偏析挙動を明らかにする。
|