研究課題/領域番号 |
21H04621
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 功 京都大学, 工学研究科, 教授 (70183861)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 高イオン伝導体 / 第一原理MD計算 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
今年度は,以下の2項目,広大な探索空間での第一原理MD計算と機械学習モデル構築・スクリーニングおよびイオン伝導度の実証実験を実施した. 広大な探索空間での第一原理MD計算と機械学習モデル構築・スクリーニング 今年度は,探索空間をICSD収録の既知物質(~10^{4}通り)限定し,スクリーニングを実施した.収集したイオン伝導度の第一原理MD計算データベースに,構造情報だけでなく化学組成情報を特徴量として採り入れたスクリーニングモデルを構築した.参照物質については,結晶構造が同じで構成化学種が異なるものについても第一原理MD計算の対象に含めた。 イオン伝導度の実証実験 妥当なモデルが構築できた段階で,現有の合成装置の温度・圧力や合成雰囲気で対応可能な合成物を対象にイオン伝導度の検証実験を開始した.現段階の対象物質に限定すると,対象はICSF収録の既知物質であるので,合成方法は元文献での掲載に基づき,数種の合成手法や合成条件を並列試行した.合成成功の後ペレットを作成し,イオン伝導度の温度依存性を測定した.その結果,既知物質であっても,これまでイオン伝導度の観点から研究されていなかった新規の高イオン伝導体の候補がリストアップされた.また,それと同時に,研究成果としてのイオン伝導度の計算値・実験値をデータベース化し,次年度以降のより探索範囲の広いスクリーニング(~10^{10}通り)に利用するための準備を行った
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初2年を要すると見込んでいた第一原理計算に長足の進展があり、ベイズ最適化の手法を通して、スムーズに仮想スクリーニングへ移行することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き,本研究では,この困難な過程を克服するために2つのプロセスを実施する.まず本研究代表者らが2018年に発表した自家製の安定化学組成CRC(chemically relevant composition)データベースを参照して,当該化学組成が熱力学的に安定な化合物である可能性を把握する.このデータベースには,66種の陽イオンと10種の陰イオンから構成される5元系までの10^{10}組成についての熱力学的安定性の予測値が収録されている.予測されたイオン伝導度と安定性が共に高い化学組成について,結晶構造探索を行う.この段階では,実験と理論計算を併用する.実験的には,現有の並列合成実験装置を活用し,当該組成の周辺組成について合成実験を行い,生成相の結晶構造をX線回折実験により求める.当該組成ピンポイントでなく,周辺組成を含めることで,共存する結晶相についての情報を含めて獲得できる.当該組成の化合物を絞り込むことができれば,高イオン伝導相が高温相である可能性も想定し,X線回折実験を高温までの範囲で行う. また,昨年度同様に,これらの実験と並行して,第一原理計算での構造探索も進める.現在は汎用的な方法が存在しないので,新しい手法の開拓を行うと同時に,研究代表者らがすでに開発した方法で探索する.この現行方法では,ICSD結晶構造データベースに収録されているプロトタイプ構造を利用し,当該化学組成に応じて陽イオン,陰イオンの各サイトに元素を配置させることで第一原理計算の初期構造を作成し,第一原理計算で構造最適化して生成エネルギーを評価する.これを擬2元,擬3元といった探索空間を網羅させて,生成エネルギーの凸包上に出現する熱力学的安定相を求める.
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