研究課題/領域番号 |
21H04624
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
戸田 裕之 九州大学, 工学研究院, 教授 (70293751)
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研究分担者 |
小林 正和 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20378243)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | シンクロトロン / 3Dイメージング / 3DのX線回析 / 高分解能 / マルチモーダル |
研究実績の概要 |
マルチスケール化に関し、超高分解能⇔高分解能の切り替え技術を、マルチモーダル化に関しては、X線CT⇔XRDの切り替え技術、およびそれらデータ対応技術に取り組んだ。また、マルチモーダル化に関し、分散粒子の追跡による3D塑性歪みマッピングとそれに基づく幾何学的に必要な転位(GND)、統計的に必要な転位(SSD)、原子空孔の3Dマッピングを実施した。前者、後者に関しては、観察 ・解析対象をそれぞれTRIP鋼およびアルミニウムとした。 6月放射光実験は、放射光施設SPring-8の高分解能イメージング用ビームラインBL20XUで実施した(15シフト:5日間)。用いた材料は、結晶粒径およびオーステナイト相の安定度を制御した低炭素TRIP鋼である。前回の基盤(A)で整備した高速・高分解能回転試料ステージ上に特殊材料試験機をセットし、TRIP鋼試験片に引張り負荷をかけながら投影型X線CT(高分解能)、結像型X線CT(超高分解能)、および特殊X線回折実験を切り替えて行った。後者は、φ1μmに絞った細束X線をラスタースキャンしながら試料を同時に回転させ、試料内の全ての位置に全ての方向から細束X線を入射してX線回折パターンを数十万枚取得する特殊なX線回折実験である。大学に帰投後、2種類のX線CT画像の再構成、XRD回折斑点の特定、両者の位置合わせ、可視化できるオーステナイト粒の特定と各XRD回折斑点との対応付けを行った。最後の項目が最もチャレンジングで、画像解析技術を駆使して技術開発した。 年度後半のビームタイムでは塑性歪みマッピングに適したアルミニウム合金の引張試験を投影型X線CTおよび結像型X線CTで行い、そちらの解析も開始した。総じて、3年間のプロジェクトで基本とする基礎データを取得すると共に、その初期解析を行い、基盤技術開発を進めると共に、問題点の洗い出しなどを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定した研究開発を順調に実施するとともに、次年度実施予定の項目の一部を前倒しで実施できた。また、プロジェクトの全期間を通じて必要な要素技術、基礎データの取得も実施することが出来た。エアベアリング式の試料回転ステージの導入による高速・高精度試料回転技術の導入など、当初から予想された技術的困難さに対し、当初から計画した対応策に加え、それ以外の技術的な困難さ(位置合わせの困難さ、位置合わせ技術の重要性、位相コントラストイメージングのコントラスト保証の重要性など)を確認できると共に、再実験時にそれらを克服するための技術を考案、適用し、当初予定した技術を完成させることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
一般課題として充分なビームタイムを確保したうえで、マルチスケール化に関しては、超高分解能⇔高分解能の切り替え技術を、そしてマルチモーダル化に関しては、X線CT⇔XRDの切り替え技術、およびそれらデータの対応技術を引き続き開発する。これらを4月の実験から適用する予定である。マルチモーダル化に関しても、分散粒子の追跡による3D塑性歪みマッピングとそれに基づく幾何学的に必要な転位(GND)、統計的に必要な転位(SSD)、原子空孔の3Dマッピングを適用した解析を実施する。前者、後者に関しては、観察・解析対象をそれぞれTRIP鋼、およびアルミニウム合金とする。4月の放射光実験では、シンクロトロン放射光施設SPring-8の高分解能イメージング用ビームラインであるBL20XUで実施する。エアベアリング式の高速・高分解能回転試料ステージ上に特殊材料試験機をセットし、TRIP鋼試験片に引張り負荷をかけながら投影型X線CT(高分解能)、結像型X線CT(超高分解能)、および特殊X線回折実験を切り替えて行う。昨年度開発した位置合わせ技術も適用するとともに、大学に帰投後、2種類のX線CT画像の再構成、XRD回折斑点の特定、両者の位置合わせ、可視化できるオーステナイト粒の特定と各XRD回折斑点との対応付けでは、精度保証をさらに高度化する。また、これ以外のビームタイムで塑性歪みマッピングに適したアルミニウム合金の引張試験を投影型X線CTおよび結像型X線CTで行い、そちらの解析も鋭意行っている。総じて、3年間のプロジェクト期間で基本とする基礎データで昨年度取得済みのものに対し、それらの本格的な解析を行い、基盤技術開発を進める。
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