本研究では、非定常条件(Modulation Excitation、過渡応答法)でのOperando分光(赤外、紫外可視、X線吸収)により過渡的に観測される活性種を特定し、その活性種の濃度・反応性を最大化する条件を意図的に設定することで、従来の定常反応研究では未探索の触媒現象を発見することを目的とする。具体的には、3種のターゲット系(①室温脱硝、②メタンのドライリフォーミング、③劣化触媒の自己再生)を非定常操作の繰り返しにより連続的に達成する固体触媒系の開発を目的とする。また、触媒毒や微粒子の凝集等、定常反応では不可避の問題点を過渡的な条件変動により回避し、表面の潜在力を最大化する。基礎研究(表面科学)と応用研究(触媒プロセス)の両分野の手法を融合し、反応研究における未踏領域を開拓する。 2021年度は、赤外分光(IR)、紫外可視分光(UV-vis)、X線吸収分光(XAFS)の試料セル(反応温度に加熱)に各種反応ガスを流し、出口のガスを質量分析器(MS)または赤外分光(ガスセル)にて連続分析する装置を作成した。各装置のガス供給部に高速での周期的流通ガス供給・切り替え装置を設置し、Operando ME分光測定が可能な装置が完成した。本装置を用いて、雰囲気制御による凝集金属の可逆的自己再生現象を発見した。担体に高分散担持された触媒は高温での連続使用の最中に徐々にシンタリングするため、触媒性能は徐々に低下する。ディーゼル脱硝用に車載されているAg/Al2O3触媒の活性成分であるAgの融点(962℃)は白金(1769℃)に比べて低いため、従来型のPt触媒に比べてAg微粒子が凝集しやすい。本研究では、高温水素処理で加速劣化させたAg/Al2O3上の巨大Ag粒子(粒径50 nm)を典型的なディーゼル排ガス(500ppmNO+10%O2)に曝すと、もとの高活性ナノ構造(原子状に分散したAg)に戻ることを見出した。
|