研究実績の概要 |
Al2O3担持Ag(Ag/Al2O3)触媒は炭化水素を還元剤とする窒素酸化物の選択還元反応(ディーゼル自動車排ガスの脱硝)に高い活性を示す。原子状に分散したAg(I)種が本系の活性種であるが、リーン/リッチ条件下でのAg種の動的変化や固定化サイトの構造については、十分に検討されていない。本研究では、H2下での孤立Ag(I)種の還元的凝集と、NO + O2下でのAg金属ナノ粒子の孤立Ag(I)種への再分散を、種々のin-situ分光法(X線吸収分光, UV-vis, IR)とDFT計算を用いて研究した。 600 ℃で 10 回繰り返し、交互にH2、 NO + O2処理すると、還元条件でのAgナノ粒子生成と酸化条件での再分散(ナノ粒子の孤立Ag(I)種のへの変換)が可逆的に起こった。IRおよびDFTの結果から、孤立Ag(I)はγ-Al2O3上の強いルイス酸サイト(配位不飽和AlIV)に隣接するHO-μ1-AlVIサイトのH+と交換することで隣接AlIVサイトのルイス酸強度を低下させることがわかった。H2雰囲気下では、AgO-μ1-AlVI種が還元され、Ag金属ナノ粒子と担体上のHO-μ1-AlVIサイトが形成される。NO+O2下での再分散は、金属AgのAgNO3種への変換・移動、AgNO3のγ-Al2O3表面のHO-μ1-AlVIとのイオン交換(AgO-μ1-AlVI生成)により進行する。理論検討の結果、γ-Al2O3の(100)面上のHO-μ1-AlVIサイトが(110)面上のルイス酸(AlIV)サイトが隣接したサイト、即ち、(100)-(110)ステップエッジサイトが孤立Ag(I)種の固定化サイトであることがわかった。 以上の成果は、非定常条件でのOperando分光(赤外、紫外可視、X線吸収)により過渡的に観測される活性種の挙動特定を基盤とする劣化触媒の自己再生手法の開発と位置づけられる。
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