研究課題/領域番号 |
21H04629
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松山 秀人 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 教授 (50181798)
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研究分担者 |
松方 正彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00219411)
比嘉 充 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30241251)
小野 努 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (30304752)
吉岡 朋久 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 教授 (50284162)
中川 敬三 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 准教授 (60423555)
神尾 英治 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30382237)
佐伯 大輔 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (70633832)
松岡 淳 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 助教 (80874833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 膜分離 / 正浸透膜(FO膜) / 駆動溶液(DS) / 水処理プロセス |
研究実績の概要 |
1.新規水チャネル型FO膜の創製 1-1.環状ペプチド分子集合体チャネル膜の創製(松山、吉岡、佐伯):分子動力学計算に基づき分子設計された種々の環状ペプチドについて、リン脂質二分膜へ導入してペプチドチャネル型FO膜作成を行った。1-2.イオンビーム飛跡グラフト重合法によるナノウォーターチャネルFO膜の構築(比嘉):ポリエチレンフィルムにXeイオンビームを照射後、クロロメチルスチレンのグラフト重合を行うことでナノチャネル作成を試みた。照射前後の膜電位測定でグラフト鎖の導入を確認した。1-3.革新的ロバスト無機ゼオライトFO膜の創製(松方):孔構造の異なる支持体上にゼオライト膜を製膜しそのFO膜特性の評価を行った。支持体構造がゼオライト膜の水透過性に影響することが明らかになった。1-4.計算機科学による高機能FO膜開発支援 (吉岡):Amphotericin Bの環状ペプチドの一部の水酸基を水素に置換することで疎水化したチャネルモデルがより高い透水性を示すことを分子動力学(MD)シミュレーションで見出した。 2.新規刺激応答性駆動溶液(DS)の創製 2-1.熱応答性イオン液体DSの創製(小野、松岡):種々の水素結合性官能基を有するカチオンと、疎水的なアニオンであるbis(trifluoromethylsulfonyl)imideからなる数種の上限臨界溶液温度型イオン液体を開発した。2-2.刺激応答性有機ポリマーDSの開発(中川):親水的なエチレンオキサイド(EO)及び疎水的なブチレンオキサイド(BO)の共重合比によって相分離挙動を制御する下限臨界溶液温度型コポリマーDSを開発した。 3.FO膜透過とDS再生を含む連続システムによるFS評価とFO膜システムの実証(松山、神尾):開発DSを用いて連続再生するFOシステムのラボ実験を行い、透水性能評価とともに物質収支データを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.新規水チャネル型FO膜の創製 1-1.環状ペプチド分子集合体チャネル膜の創製:分子動力学計算に基づき分子設計された種々の環状ペプチドについて、リン脂質二分膜へ導入してペプチドチャネル型FO膜作製を行った。1-2.イオンビーム飛跡グラフト重合法によるナノウォーターチャネルFO膜の構築:ポリエチレンフィルムにXeイオンビームを照射後、クロロメチルスチレンのグラフト重合を行い、照射前後の膜電位測定において電位差を生じたことによりグラフト鎖の導入を確認した。1-3.革新的ロバスト無機ゼオライトFO膜の創製:孔構造の異なる支持体上にゼオライト膜を製膜し、そのFO膜特性の評価を行い、ゼオライト膜の水透過性が支持体構造パラメータによって整理可能であることを初めて見出した。1-4.計算機科学による高機能FO膜開発支援:Amphotericin Bの環状ペプチドの一部の水酸基を水素に置換することで疎水化したチャネルモデルのMDシミュレーションでより高い透水性が観測され、正浸透膜用水チャネルとしての有用性が示された。 2.新規刺激応答性駆動溶液(DS)の創製 2-1.熱応答性イオン液体DSの創製:種々の水素結合性官能基を有するカチオンと、疎水的なアニオンであるbis(trifluoromethylsulfonyl)imideアニオンからなる数種の上限臨界溶液温度(UCST)型イオン液体DSを開発した。2-2.刺激応答性有機ポリマーDSの開発:EO及びBOを共重合させる際の共重合比によって相分離挙動を制御できることを明らかにし、相転移温度が45~60℃程度の下限臨界溶液温度(LCST)型コポリマーDSを開発した。 3.FO膜透過とDS再生を含む連続システムによるFS評価とFO膜システムの実証 開発DSを用いて回収再生するFOシステムのラボ実験を行い、透水性能評価とともに物質収支データを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
1.新規水チャネル型FO膜の創製 1-1.環状ペプチド分子集合体チャネル膜の創製:開発したペプチドチャネル型FO膜の透水性、塩阻止性、安定性を評価し、既存膜と比べた水チャネル膜の有用性を明確にする。1-2.イオンビーム飛跡グラフト重合法によるナノウォーターチャネルFO膜の構築:2021年度に作製した膜にさらにトリメチルアミンによる四級化処理を行い、膜の水透過性評価を行って、高透水性が得られる製膜条件との関係を検討する。1-3.革新的ロバスト無機ゼオライトFO膜の創製:支持体構造も踏まえたゼオライト膜の最適化検討を行い、安定性の高い無機ゼオライトFO膜を創製する。1-4.計算機科学による高機能FO膜開発支援:構築した分子シミュレーションを用いて水チャネルと透過分子との相互作用がチャネル内分子の挙動に及ぼす影響を詳細に検討し、高透過選択性発現のメカニズムに基づく高性能チャネルの設計支援を行う。 2.新規刺激応答性駆動溶液(DS)の創製 2-1.熱応答性イオン液体DSの創製:構造の異なるイオン液体DSをさらに設計・合成し、水素結合以外の化学構造的因子についても明らかにするとともに、最適なUCST型DSを選抜する。2-2.刺激応答性有機ポリマーDSの開発:連続運転システム構築に向けて、相分離挙動の安定性の検討など連続運転に伴うDSとしての課題の抽出を行う。 3.FO膜透過とDS再生を含む連続システムによるFS評価とFO膜システムの実証 開発DSを連続再生しながら連続FO運転する海水淡水化のラボ実証試験を行う。
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