研究課題/領域番号 |
21H04630
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (20201642)
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研究分担者 |
原 亨和 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70272713)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | アンモニア / 膜分離 / 触媒 / 膜反応器 / 低温 |
研究実績の概要 |
本研究では,アンモニア低温合成触媒開発の実績を有する東京工業大学とアンモニアおよび水素選択透過膜の開発実績のある広島大学が共同で,世界に先駆けて低温低圧におけるアンモニア引抜型膜型アンモニア合成プロセスを提案し実証することを研究目的とし,① 室温~300℃でのNH3合成および分解触媒の開発と反応特性評価,② 室温~300℃でのNH3選択透過膜およびH2選択透過膜の開発と特性評価,③ 膜型反応システムの構築と反応特性評価を研究項目とする。研究実績の概要は以下のようにまとめられる。 ① 50 ℃以上の温度で水素と窒素からアンモニアを合成できるRuナノ粒子を固定化したCaFH固溶体触媒(Ru/CaFH)の反応特性を速度論的に解明すると同時にその高性能化を図った。 ②分離膜の開発と特性評価に関しては,フッ素系高分子電解質NafionおよびAquivionをセラミック多孔質支持体に担持した複合膜を開発し,50~250℃でNH3,H2,N2単成分系および混合系での透過特性評価を行った。開発した複合膜は,50℃でNH3透過率>1x10-6mol/(m2 s Pa), NH3/H2>90, NH3/N2>800の極めて優れたNH3選択透過性を示すことを明らかとした。また,NH3/H2およびNH3/N2混合系における選択透過性は,単成分でのとほぼ同じ値であり,組成依存性が観察されなかった。 ③膜型反応器において,温度と圧力は触媒反応特性および膜透過特性にも大きな影響を及ぼす。膜反応実験条件の最適化のために,膜分離と触媒反応を組み込んだ膜反応シミュレーターを構築し,プロセスシミュレーションを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究機関は連携しながら研究を進めており,2021年度の研究計画に従い,おおむね順調に進展している。それぞれの研究進捗状況は以下の様にまとめられる。
①Ru/CaFHの反応特性を速度論と分光学的手法によって解明した。当該触媒での窒素の解離は容易であり,室温付近で窒素分子を解離吸着しアンモニアを合成していることが分光学的手法によって明らかになった。また,アンモニア合成の見かけの活性化エネルギーは20 kJ/mol程度であり、これまで開発されたいかなる不均一系触媒の見かけの活性化エネルギー(> 40 kJ/mol)より小さいことが明らかになった。更に,当該触媒の原料の高表面積化により,当該触媒の高表面積化と高性能化を試みた。機械的粉砕によって表面積を増加させたCaH2を原料として表面積50 m2/gのRu/CaFHを調製したが,そのアンモニア合成活性は従来の触媒(表面積20 m2/g)と同等であった。機械的に粉砕されたCaH2では表面の一部が酸化していることが確認され,この酸化が触媒の活性向上を妨げていることが予想された。以上のことから,化学的手法で合成した高表面積CaH2を原料とする指針が得られた。 ②膜種類としては表面酸性化セラミック膜としてフッ素系高分子電解質/セラミック複合膜を開発した。本開発膜は極めて高いNH3選択透過性を示し,既往の報告例と比較しても極めて高い選択透過性を示すことを明らかとした。 ③膜型反応システムの構築と反応特性評価は,当初の研究計画では2022年度から開始する予定であったが,2021年度中に膜反応実験に用いるNH3選択透過性膜開発のめどがついた。そこで研究計画を前倒して,膜分離と触媒反応を組み込んだ膜反応シミュレーターを構築し,プロセスシミュレーションを開始した。
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今後の研究の推進方策 |
①触媒の開発:金属Feナノ粒子に新規電子供与体を複合化することにより、100 ℃程度の低温でもNH3を合成できる触媒を実現する。電子供与体としては既にその有効性が実証されているBaO-BaH2混合物を計画している。反応特性評価:上記取り組みで得られた触媒の特性を速度論的に解析し、当該触媒を稼働させる最適条件を検証する。 ②分離膜の開発と特性評価:200℃以下の低温で,分子径の近接したH2,N2,NH3混合系からNH3あるいはH2選択性膜を開発する。親和性を制御したFunctionalized ceramic膜の創製とサブナノ細孔制御が極めて重要である。以下を具体的な研究項目とする。 (1)表面酸性化セラミック膜の開発:2021年度に開発したフッ素系高分子電解質/セラミック複合膜の高度化を図るとともに,ナノ細孔TiO2やZrO2膜を用い,その内表面の硫酸化やリン酸化を行う。 (2)ナノ金属担持型シリカ膜:NH3はNiやCoなどの遷移金属に配位することが知られている。金属種,量および焼成温度などにより,選択性発現の可能性を明らかとする。 (3)シリカネットワーク精密制御膜:各種オルガノシリカのゾル調製条件(アルコキシシラン種,アルコキシシラン/酸/水モル比,ドープ種およびモル比など)とゲル化条件(焼成温度など)を最適化することで分子篩に基づき水素選択性を開発する。 ③膜型反応システムの構築と反応特性評価:NH3合成膜型反応器のシミュレーションモデル化を行ない,膜透過性,反応性およびプロセス条件(供給量,温度など)の最適化を行う。さらに,温度と圧力は触媒反応特性および膜透過特性にも大きな影響を及ぼす。供給側全圧1~10 bar-G,透過側圧力10~100 kPa-a,温度50~300℃で,膜反応実験を開始する。
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