研究課題/領域番号 |
21H04632
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 潤一郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (60218576)
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研究分担者 |
浅野 周作 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (30827522)
工藤 真二 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (70588889)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | バイオマス / コークス / トレファクション / 酸触媒 / 石炭 / 無水糖 / コークス強度 / フラン・フェノール類 |
研究実績の概要 |
粒径<3 mmに破砕した木質系バイオマス(無担持バイオマス)およびこれに無機酸(硫酸あるいはリン酸)を水溶液から含浸担持したもの(酸担持バイオマス)を原料として、トレファクション(TF)およびトレファイド固体(TF固体)のコークス化を検討した。無担持バイオマスの225-350℃ のTFによって得たTF固体は粉砕が極めて容易であったので、粒径<0.1 m、<0.04 mmおよび<0.02 mmの試料を調製できた。粉砕物を温度40-200℃、圧力128 MPaで成型し、次いで420-1000℃で炭化することによってコークスを得た。コークスの引張強度は成型前の粉砕の程度に依存したが、いずれの粒径の場合もTF温度が275-300℃で最大(17-32 MPa)となった。コークス強度は最低でも8 MPaであり現行の商用コークスを超えている。このように、バイオマスのTF、粉砕、熱間成型および炭化のシーケンスによる高強度コークスの製造に成功した。酸担持バイオマスからも 14-22 MPaの引張強度を有するコークスを製造できた。しかも、酸担持バイオマスを最適温度(300-320℃)でTFすると、無水単糖(レボグルコサンおよびレボグルコセノン)が12 wt%の高い収率(セルロース炭素基準で約30%)で得られるとともに、フラン・フェノール類(モノマー)が4.5-5 wtの収率で得られることがわかった。以上に述べたように、1年目の研究によって、早くも本研究が目標とする「バイオマスからの高強度コークスと無水糖、フラン・フェノール類のコプロダクションの概念実証」に近づいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TFバイオマスから得たコークスに対するTF温度および炭化温度の複合的影響を系統的に調べ、加えてコークスの微細構造解析結果に基づいてコークス強度発現機構、TF温度に最適値が存在する理由を定性的ではあるが明らかにした。コークス強度発現機構の解明は2年目および3年目の課題であったが、 1年目でコークス強度発現機構を概ね解明できた(1年の計画前倒し)。 また、当初計画には含めていなかったが、 TFバイオマスと石炭の配合物からの高強度コークス製造にも挑戦し、「バイオマスを数wt%でも添加するとコークス強度が大きく低下する」従来の見解を覆し、バイオマ配合率(0-100%)に関わらず強度 5 MPa以上のコークスを製造可能であることを明らかにした(当初計画にない展開研究の実施と成果創出)。酸担持による無水単糖およびフラン類・フェノール類の高収率製造に係る課題は1年目および2年目に取り組み収率最大化を達成する計画であったが、1年目で無水単糖収率の最大化条件(酸担持率、TF温度)を提示するに至った(1年の計画前倒し)。
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今後の研究の推進方策 |
研究は計画よりも進捗している。主たる課題は1年前倒しで進めることができている。このことを踏まえ、当初計画していなかった三つの課題、すなわち、(1)TFを操作するのに必要な熱量をTF温度の関数として明らかにするための研究に着手し、2年目の1年間で完了する。(2)TF固体の熱間成型温度は200℃が最適であったが、工業化を視野に入れ、熱間だけでなく冷間でも高強度の成型体、さらに高強度のコークスを製造可能なTF固体の調製法を検討する。そこで、もともと2 年目に計画していたTFおよび炭化由来の重質油をリサイクルすることによるフェノール・フラン類の増収と重質油消去を狙うプロセスの研究の一環として、重質油を可塑剤として効果的に活用する室温-70℃の温度における成型と成型体のコークス化に取り組む。
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