研究課題/領域番号 |
21H04638
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂本 雅典 京都大学, 化学研究所, 准教授 (60419463)
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研究分担者 |
田中 晃二 京都大学, 高等研究院, 特任教授 (00029274)
小林 克彰 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (30433874)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 光触媒 / 赤外光 / プラズモニクス |
研究実績の概要 |
赤外光を捕集し、電力に変える材料の開発は本研究課題の重要な柱の一つである。申請者らはすでに赤外光触媒の開発に成功しているが、更なる効率化を目指して半金属ナノ粒子を中心に赤外光応答材料の開発と評価を行った。効率を支配する重要な要素である光励起後の赤外光触媒の緩和過程の解明について時間分解分光を用いて解明した。 本申請期間においては、赤外域にLSPRを示す半金属ナノ粒子を光捕集部として有するヘテロ構造ナノ粒子触媒を系統的に合成し、赤外光触媒活性の支配する要素の解明を試みた。特に半金属ナノ粒子の候補としては、硫化銅に着目し、異なる結晶構造、組成を持つ硫化銅ナノ粒子(Cu2S、Cu9S5、Cu7S4、CuS)を系統的に開発した。さらには、これらのナノ粒子に、アクセプターとしてCdSを接合することでプラズモニックp-n接合界面を構築し、赤外光触媒水素生成の評価を行った。この結果、赤外光触媒水素生成の活性を評価するのは(i)硫化銅ナノ粒子のフェルミ準位、(ii)アクセプター層の大きさであることが明らかになった。たとえば、Cu7S4やCu9S5はCuSと比べて優れた触媒活性を示したが、これはCu7S4やCu9S5がCuSと比べてネガティブなフェルミ準位を持ち、CdSへの電子移動に有利なバンド構造を有することが原因と考えられる。 これらの結果を基に様々なプラズモニックp-n接合界面を検討し、Cu9S5ナノ粒子とCdSの組み合わせにおいて、波長1100 nmで外部量子収率4.4%を示す光触媒水素生成触媒を開発した。これは、現時点での世界最高効率であり、バンドアライメントの制御と触媒の構造の制御がプラズモニックp-n接合界面を用いた高活性光触媒の開発において重要な要素であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請期間においては、赤外域にLSPRを示す半金属ナノ粒子として、硫化銅ナノ粒子に着目し、結晶構造、組成の異なる硫化銅ナノ粒子(Cu2S, Cu9S5, Cu7S4, CuSなど)の合成と、光学特性の解明、緩和過程の解明、それ等の結果をを基にしたヘテロ構造ナノ粒子の開発と触媒活性の評価を行った。系統的な研究開発を通じ、触媒活性を支配する要因を一部明らかにすることに成功した。 更には、赤外光触媒の更なる効率向上を目指し、これらの成果を基盤として、新たな赤外光触媒の開発と評価を行った。半金属ナノ粒子として硫化銅ナノ粒子(Cu9S5)を用い、波長1100 nmで外部量子収率4.4%を示す光触媒水素生成触媒を開発した。これは、現時点での世界最高効率であり、本期間に開発された触媒は今後、赤外光触媒反応の高効率化を進める上で有力な触媒の一つとなることは間違いない。 これらの成果に加え、光触媒水素生成反応以外の反応として、光酸素生成反応および光レドックスカップル反応の開発も進めており、こちらも一定の成果が出つつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は更なる効率化を目指して半金属ナノ粒子を中心に赤外光応答材料の開発と評価を行う。効率を支配する重要な要素である光励起後の赤外光触媒の緩和過程の解明について時間分解分光を用いて解明する。 赤外域にLSPRを示す半金属ナノ粒子を光捕集部として有するヘテロ構造ナノ粒子触媒を系統的に合成する。半金属ナノ粒子の候補としては、硫化銅などを検討している。プラズモニックp-n接合界面においては、再結合が大きく抑制され光触媒効率が向上する発見している。時間分解反応を用いて界面で進行するキャリア移動を明らかにするとともに、得られた結果をもとに界面を最適化することで、効率的な光触媒反応を実現する。 赤外光触媒の開発、高活性化に加えて反応の多様化も進める。光触媒水素生成反応以外の反応として、光酸素生成反応および光レドックスカップル反応の開発も進めており、一定の成果が出つつある。今後はこれらの反応の性能向上にも注力する。
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