研究の目的と研究実施計画に沿って、昨年度に確立させた方法を用いて、直径が数ナノメートルで単分散な金属ナノ結晶を合成し、それらの液相中での性質について調べた。具体的に、溶媒の種類(または、溶液の組成)と温度を調節し、様々な条件において、金属ナノ結晶を定常的に被覆している有機分子の結合量を、熱重量分析などを行って測定した。有機分子の結合量は、溶液に含まれる分子の濃度に強く依存し、その濃度依存性は、溶媒の種類や温度によっても大きく変化することが観察された。それらの測定結果から、金属と分子の結合や解離のしやすさや、またそれが環境の違いによってどのように変化するのかを、定量的に特性づけることを試みた。定量化を行うためには、現状では、多くの実験の量と時間を必要とするため、データの収集と解析を効率良く行えるように、実験方法の改良を現在行っている最中ではあるが、一定の成果が得られつつあり、人材の追加や役割担当の修正も行うことで、効率化を行うことができた。その結果から、金属と分子の結合や解離のしやすさは、合成方法のわずかな違い(数ナノメートル程度の金属ナノ結晶の大きさの違い)によっても、敏感に変化することが確認されており、サイズに関して特異性が見られた。概して、本研究で開発している系は、一般に広く知られている金属ナノ結晶と有機分子の結合の性質とは、大きく異なることが明らかになりつつあり、特殊な性質を有することが示唆された。
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