研究課題/領域番号 |
21H04647
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
好田 誠 東北大学, 工学研究科, 教授 (00420000)
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研究分担者 |
石原 淳 東北大学, 工学研究科, 助教 (50801156)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 電子スピン波 / スピン軌道相互作用 / 半導体量子構造 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
本研究は、光の独壇場である波の並列性や多重性を、電子スピン波を用いて半導体に組み込み、光通信と固体情報処理の間で「波」の性質を共有できる初めての情報担体を創出する。この目的のもとに本年度は、光の偏光空間構造を任意に制御することで様々な波長の電子スピン波を生成することに成功した。これは、半導体において電子スピン波の波長に情報を載せて演算処理するのに必要不可欠なマイルストーン技術となる。同時に、演算回路実証に向けたデバイスシミュレーションにも取り組み、複数の電子スピン波から特定の波長の電子スピン波のみを取り出す電子スピン波フィルタが実現できることを示した。このようなフィルタ回路は、既存電子デバイスでも極めて重要な機能であり、電子スピン波を用いた演算回路においても同様に重要な意味を持つ。これによって、今後は電子スピン波を用いた情報処理および情報伝送の基盤を確立することができたといえる。また、本年度はこのような電子スピン波が情報担体として活用することが可能であることを示すために電子スピンを用いた並列コンピューティングに関わるパースペクティブ論文(Perspective on spin-based wave-parallel computing)を執筆した。本論文は当該号のカバーにも採用されFeaturedとしても取り上げられ、このような波動性を活用した情報担体の注目度の高さが伺える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では光の有する波の性質を半導体における電子スピンへ組み込むことで、これまでデジタル処理が基本であった電荷による情報処理から、波の広帯域・空間並列・波長多重性を組込んだ新たな原理を生み出すことを目的としている。これまで行ってきた空間偏光を電子スピン波に転写する技術基盤をもとにして、シミュレーションも活用することで、演算に向けてフィルタ回路の原理を示すことができ、電子スピン波が情報担体として活用できる具体的なデバイス提案まで行った。このことから順調に研究が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より複雑な論理演算のシミュレーションや複数の電子スピン波を同時に生成・制御できる技術基盤を構築することが重要であると考えられる。また波の多重性や並列性を活用したデバイス提案についても進めることで、電子スピン波の情報担体としての能力を示す予定でいる。
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